マグミクス | manga * anime * game

令和に残った「小学一年生」と「8年生」。カオスな誌面も招いた「不変のテーマ」とは

「ピッカピカの1年生~」のCMソングでもおなじみの学習雑誌「小学一年生」ですが、令和3年の現在、他の学年誌は休刊となってしまいました。「コロコロ」や「ボンボン」とはまた違った派閥を構成していた第三勢力「小学△年生」シリーズの盛衰をひも解きます。

大正時代に創刊! 他の児童向けマンガ雑誌との明確な違いも

「小学一年生」2021年2月号(小学館)
「小学一年生」2021年2月号(小学館)

『ドラえもん』(藤子・F・不二雄)、『あさりちゃん』(室山まゆみ)あるいは『とっとこハム太郎』(河井リツ子)……誰もが知る国民的マンガが連載されていた雑誌が現在、ほぼ休刊状態であることをご存知でしょうか。

 その雑誌とは小学館の“学年別学習雑誌”に他なりません。学年ごとに刊行されていた「小学△年生」シリーズです。100年近く続いてきたこの看板雑誌はぜあいついで休刊となってしまいましたが、その理由のひとつには、同誌ならではのテーマ・特徴がありました。

 まず学年誌の歴史を概観していきましょう。1922年に小学館が創設されると同年に、『小学五年生』と『小学六年生』が創刊されます。つまり小学館の歴史はこの学習雑誌とともに始まりました。以降、「一年生」から「六年生」まで全学年誌が刊行されそれぞれ人気を博しますが、大戦中は低学年向けを「良い子の友」、高学年向けを「少國民の友」と統合される憂き目にあいます。

 戦後にそれらの学年誌シリーズが復活すると、1973年には全学年合計500万部の発行部数を記録。大正、昭和、平成と、激動の時代を子供たちと一緒に生き抜いてきました。

 マンガの連載作品も名作ぞろいです。(「週刊少年サンデー」「コロコロコミック」などと同時掲載されていた作品も多いですが)冒頭に挙げた作品はもとより、『いなかっぺ大将』(川崎のぼる)、『はじめ人間ギャートルズ』(園山俊二)など、今なおマンガ史に燦然と輝く作品たちが学年をまたいで掲載されていたのです。

 この「小学△年生」シリーズには、ふたつの大きな特徴がありました。ひとつは「学習雑誌」の要素で、低学年用には計算ドリル、漢字ドリルなどが付属していたこと。また学年が上がるにつれその内容も変化していった点も、他の児童向けマンガ雑誌とは一線を画していました。全体的に漂う“お行儀の良さ”は、買い与える保護者からしても頼もしいものでした。

 ふたつ目は「男女共通の総合雑誌」であること。現在においても児童向けマンガ雑誌の多くは男児向け、女児向けとターゲットを区切っていますが、この「小学生シリーズ」はあくまでも区切りは学年ごと。そのため男児向けのバトル要素が強い作品と女児向けのラブコメ作品などが同じ雑誌で連載されていました。

 この「男女共通の総合雑誌」という方針が、なんとも不思議な連載布陣を生むというのも魅力のひとつ。例えば、『ないしょのつぼみ』などの作品で知られるやぶうち優先生の作品と、『みこすり半劇場』でおなじみ岩谷テンホー先生の作品が同時期に連載されたり、さらに二次性徴に関する企画記事が同じ号に掲載されたこともありました。

 一見、混沌としているようですが、思春期に差しかかった少年少女にとって必要な知識も包括する「学習雑誌」としての機能をしっかり果たしていたとも言えます。ある意味では、雑誌自体が小学校のクラスと相似をなしていたのです。

1 2 3