青野武さんの御命日に思い出す、代表的キャラクター。宇宙人の「中身」も演じた?
得意ジャンルだった悪役とおじいちゃん
青野さんの代表的キャラを挙げると悪役が多くなります。しかし、一概に悪役と言っても、さまざまなタイプを演じているのがスゴいところ。前述したように、ギャグがまったくない凄みのあるキャラから、ギャグとアドリブ多めのものまで様々です。
シリアスな悪役というと、『宇宙戦士バルディオス』(1980年)のガットラー総統、『戦え!超ロボット生命体 トランスフォーマーV』(1989年)の破壊大帝デスザラス、『ドラゴンクエスト ダイの大冒険』(1991年)のハドラー、『ONE PIECE』(1999年)のジュラキュール・ミホークが代表的なものでしょうか。
ミホークは悪役というより敵役ですが、まったくコミカルな面のないキャラで、青野さんの演じたキャラのなかでは珍しい存在です。その代わり、劇場版『ONE PIECE』では10作品連続で毎回、違ったキャラで出演していました。中には青野さんらしいコミカルなアドリブもあり、ミホークでできない分を演じていたのかもしれません。
シリアス系の悪役でもっとも有名なのは、やはり『ドラゴンボール』(1986~1989年)のピッコロ大魔王でしょう。子供時代の孫悟空にとって最大の敵で、強さと怖さを兼ね備えた悪役でした。分身である神様も演じましたが、こちらは笑いのあるアドリブもあった感じですね。
コミカル面のある悪役と言えば、『ゲゲゲの鬼太郎(第3作)』(1985~1988年)のぬらりひょん、『忍者戦士飛影』(1985年)のハザード・パシャ、『ビックリマン』(1987~1989年)のスーパーデビルが忘れられません。しかしコミカルな面があるとはいえ、悪役特有の怖さもキチンと演技されていて、その切り替えの巧みさが光っていました。
特にぬらりひょんを鬼太郎のライバル的存在まで膨らませた功績は大きいと思います。2007年から放送された第5作でふたたび演じたときは、今度はシリアス多めで親分肌のぬらりひょんを演じていました。
悪役の次に多く演じるようになったのが、おじいちゃん役です。『天地無用!シリーズ』(1992年)の柾木勝仁、『ちびまる子ちゃん』のさくら友蔵(2代目:1995~2010年)、『交響詩篇エウレカセブン』(2005年)のアクセル・サーストン、『銀魂』(2006年~)の平賀源外など、忘れられない役ばかりでした。特に『天地無用シリーズ』では、婿養子の柾木信幸との2役を同時に演じていたのが印象深いですね。
駆け足でまだまだご紹介しきれないのは残念ですが、みなさんも心に残る作品を思い出して青野さんの声を脳内再生していただければと思います。
(加々美利治)