斬新だった男女合体ヒーロー『ウルトラマンA』。女性隊員が退場した「第28話」の衝撃
1966年の『ウルトラマン』から始まり、50年以上も続くウルトラシリーズは、いつの時代の子どもたちをも熱狂させてきました。それぞれに個性的なウルトラファミリーですが、斬新すぎる演出で世間の度肝を抜いたのが、『ウルトラマンA(エース)』です。
子供たちも困惑、まさかの変身方法
特撮ヒーローファンが、いま最も公開を待ち焦がれている映画といえば『シン・ウルトラマン』でしょう。あの『ウルトラマン』を現代に置き換えたリブート作品で、企画・脚本は『新世紀エヴァンゲリオン』や『シン・ゴジラ』で名高い庵野秀明氏とくれば、期待しない方が無理というもの。残念ながら2021年初夏の公開予定は延期と発表されましたが、じらされるほどに期待は高まり、これまでのウルトラシリーズにも再び注目が集まっています。
1966年の『ウルトラマン』から続くウルトラシリーズは、長い歴史のなかで数々のヒーローを登場させてきましたが、その創生期でとりわけ異色な存在だったのが、1972年から放送された『ウルトラマンA(エース)』です。第二次怪獣ブームを巻き起こした『帰ってきたウルトラマン』の後継作ということで、必勝の使命を帯びたゆえの気負いでしょうか、とにかく設定が斬新なのです。
まず第一に、敵が違います。それまでのウルトラシリーズでは怪獣や宇宙人を相手にしていたのですが、ウルトラマンAが戦うのは怪獣よりも強い(とされる)「超獣」です。「超獣」とは異次元人ヤプール(番組を通しての悪役というのもシリーズ初の試み)が、地球の生物と宇宙怪獣を合成・改造して創り出した生物兵器で、『仮面ライダー』でいうところのショッカーに生み出された怪人といった立ち位置です。
そして『ウルトラマンA』でもっとも衝撃的なのは、その変身方法でした。なんと、“男女合体変身”。超獣攻撃隊TAC(タック)の隊員である北斗星司と南夕子が「ウルトラタッチ」のかけ声とともに互いの指にはめたウルトラリングを合わせ、ウルトラマンAに変身するのです。主題歌でも声高らかに「いまだ!変身! 北斗と南~♪」と歌われていました。
この驚愕のアイディアは、究極の悪と戦うには性差を超えた完全な超人となる必要がある、との考えから生まれたのだそうですが、当時の親たちは、さぞ戸惑ったことでしょう。
子供たちもまた、戸惑っていました。ヒーローごっこをする時に、究極に遊びづらかったのです。それまでのウルトラシリーズなら、かけ声ひとつ、アクションひとつで変身できたのに、ウルトラマンAになるには2人いなければならず、ましてや片方は女の子なのですから。男の子同士で合体をマネるにしても、どっちが「男の役」をとるかでもめがちでした。