斬新だった男女合体ヒーロー『ウルトラマンA』。女性隊員が退場した「第28話」の衝撃
物語から突然消えた、南夕子隊員

男女合体という驚愕の変身方法を武器に始まった『ウルトラマンA』。エピソードは全52話放送されたのですが、実はダブル主演のひとりである南夕子隊員は、第28話を限りに突然物語から消えてしまいました。
「さようなら 夕子よ、月の妹よ」と題された第28話は、ルナチクスというウサギモチーフの超獣との戦いでしたが、番組の終盤で突然、南夕子隊員が自分は月星人だと言い出すのです。そして宿敵ルナチクスを倒したので月に帰るのだと。……えっ!?
そもそも南夕子隊員はTACに入る前には看護士をしており、超獣に襲われて、北斗星司とともにウルトラマンAの命と力を与えられた、というところから話が始まっていたのです。27話までは月の「つ」の字も出てこなかったのに、いきなり月へ帰ると言われても……。そしてなぜか白いひらひらのドレスで丘を駆け下り、海水に浸かりながらTAC隊員それぞれに別れを告げ、「私は月でがんばります」と言い残して宇宙へと飛び立っていきました。
この怒濤の展開に子供たちは大混乱。なかには、当時絶対に見たはずなのに「この回のことだけ覚えていない」と、記憶から消し去った人もいるほどです。この突然の降板劇、実は南隊員役の星光子さんも台本を手に取るまで知らされず、理由は今に至るまで説明されていないようですが、星さんは、視聴率という大人の事情も感じていたそうです。
その後ウルトラマンAは、北斗が両手にはめたウルトラリングを合わせることで、ひとりで変身するようになりました。けれど「いまだ!変身! 北斗と南~♪」の主題歌は番組が終わるまで変わることなく使われ続けます。大人になって知ると、少し切ないヒーロー物語でした。
(古屋啓子)