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劇場版『Zガンダム』がBS放映。『シン・エヴァ』に先駆けた「旧作と異なる結末」

『機動戦士ガンダム』の続編『機動戦士Zガンダム』は、TVシリーズと劇場版のラストが異なることで話題を呼んだ作品です。富野由悠季監督の心境に、どのような変化があったのでしょうか。TV放送時と劇場版公開時との時代背景の違いも含めて、富野監督と『Zガンダム』との関係性について考えます。

悲劇的な結末が衝撃だったTVシリーズ

『機動戦士Zガンダム A New Translation』三部作の第1部「星を継ぐ者」Blu-ray(バンダイビジュアル)
『機動戦士Zガンダム A New Translation』三部作の第1部「星を継ぐ者」Blu-ray(バンダイビジュアル)

 森口博子さんが歌うオープニング曲「水の星へ愛をこめて」も大ヒットした、TVアニメ『機動戦士Zガンダム』(テレビ朝日系)は、ファンにとっては忘れられない作品です。ニュータイプのパイロットとしてZガンダムを操縦していた主人公カミーユ・ビダン(CV:飛田展男)は、過酷な戦いの果てに最終回で精神崩壊してしまうという衝撃的な物語でした。

 TVアニメの主人公の心が壊れてしまうという異例の結末には、富野由悠季監督の当時の心理状態も大きく関係したようです。1985年~1986年に放映された『機動戦士Zガンダム』を、20年の歳月を経て、富野監督自身が新しい物語として編み直したのが劇場版『機動戦士Zガンダム A New Translation』三部作です。

 第1部「星を継ぐ者」(2005年)、第2部「恋人たち」(2005年)、第3部「星の鼓動は愛」(2006年)は、4月11日(日)、18日(日)、25日(日)と3週連続でBS12にて夜7時から放映されます。

 劇場版は、TVシリーズとは物語の結末が異なることが大きな特徴となっています。なぜ劇場版は、結末が変わったのでしょうか。富野監督と『Zガンダム』との関係性を考えてみたいと思います。

混沌化する時代を先取りした富野監督の慧眼

 大ブームを巻き起こした『機動戦士ガンダム』(テレビ朝日系)の続編『機動戦士Zガンダム』が放映された1985年~1986年は、日本社会がバブル景気へと向かう華やかな時代でした。

 前作では宿敵だった“赤い彗星”ことジオン軍のシャア・アズナブル(CV:池田秀一)と地球連邦軍のアムロ・レイ(CV:古谷徹)は、『Zガンダム』で一時的に共闘することになります。しかも、シャアはクワトロ・バジーナという偽名を使い、仮面ではなくサングラス姿で登場。金ピカに塗装されたモビルスーツ「百式」で出撃します。画面からはバブル感が漂います。

 前作は「ジオン公国 vs. 地球連邦」という分かりやすい対立構造でしたが、それから7年後の宇宙を描いた『Zガンダム』はいっきに複雑化します。ジオン軍との戦いに勝利した地球連邦軍内のエリート集団が「ティターンズ」として先鋭化したため、反対勢力「エゥーゴ」が戦いを挑むという内部抗争の物語となるのです。

 シャアとカミーユは、「エゥーゴ」の一員として戦います。さらにシリーズ後半、劇場版第2部「恋人たち」の終盤からはジオン軍の残党であるハマーン(CV:榊原良子)率いる「アクシズ」が戦闘に加わり、三つ巴バトルへと展開します。

 ベルリンの壁が崩壊し、米国とソ連との冷戦が終結したのが1989年。冷戦が終わり、ようやく平和な時代が訪れたかのように思えました。しかし、軍事バランスが崩れたことで中東では紛争が続発し、さらにテロ事件が世界各地で相次ぎます。『Zガンダム』はまるで混沌化する時代を先取りしたかのような、不透明な世界観となっています。富野監督の先見性には、驚くばかりです。

【画像】『Zガンダム』にで活躍した、かっこいい機体たち(7枚)

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