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アニメ『タイガーマスク二世』放送40周年。衝撃的なメディアミックスの成功を振り返る

メディアミックスとして異例の成功、実在の「タイガーマスク」

原作マンガ『タイガーマスク二世』第2巻(少年画報社)
原作マンガ『タイガーマスク二世』第2巻(少年画報社)

 こうして、本作『タイガーマスク二世』の放送が開始されました。オープニング曲前に「力が正義ではない!正義が力だ!」というセリフから始まるのは、前作の「お前は虎だ!虎になるのだ!」のパターンを踏襲して、胸が熱くなる部分です。

 作品の大まかな流れは、日本プロレスを乗っ取ろうとする「宇宙プロレス連盟」とタイガーマスクの戦いでした。新しいタイガーマスクは、かつて伊達直人が支援していた孤児院の子供のひとりで、普段は亜久竜夫というさえない新聞記者という設定です。作品が変身ヒーローを意識していた部分もあり、普段乗っているスポーツカーの車体が裏返ってタイガーマスクの乗っている虎縞のスポーツカーへと変形するギミックがありました。

 必殺技は「タイガーフィニッシュ」と呼ばれる複数の技を使い、前作のような相手に敗れたら新しい技を生み出すという展開はありません。また、富士山麓にピラミッド型の秘密道場を持ち、鎧をつけた虎・アイアンガーと稽古をするという、当時のアニメ的な内容が随所に含まれていました。

 しかし一番驚いたのは、実際に「タイガーマスク」というレスラーがマットに上がったことです。アニメ作品のメディアミックスとしては初期にして異例でした。

 そのデビュー戦は、アニメ放送開始3日後の1981年4月23日。デビュー前の世間の評判は、人気優先の「張子の虎」という意見がほとんどで、筆者もバカにされたような気分だったことをおぼえています。

 ところが、この実在するタイガーマスクが予想以上のテクニックと強さを見せました。後にジュニアヘビー級のチャンピオンとなり、タイガーマスクとしての通算成績では一度もフォール負けがなかったほどです。

 筆者もアニメだけでなく、金曜夜のプロレス中継「ワールドプロレスリング」まで見るようになったほどで、未曽有のタイガーマスクブームとなり、これがさらにプロレスブームの引き金となりました。アニメでも番組後半で実写映像が入るようになり、タイガーマスクはマンガやアニメのヒーローから、現実にいるプロレスラーへと認識が変わっていきます。

 一方のアニメ本作は、裏番組が原作者と出版社が一緒の人気作『あしたのジョー2』という不遇さもあって視聴率が低迷し続け、実在するプロレスラーのアブドーラ・ザ・ブッチャーやスタン・ハンセンなどを登場させました。ブッチャーは原作者が同じマンガ『プロレススーパースター列伝』から設定の一部を引用して、キャラを膨らませています。

 ところが、こういった試みがあまり数字には反映されず、3クールほどの全33話という短命で終了してしまいました。
 しかし、結果的にはメディアミックスという面で「タイガーマスク」は大成功を収めたわけです。

(加々美利治)

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