『進撃の巨人』最終回から読み解く エレンが求めた”自由”とは?
ついに完結を迎えた『進撃の巨人』。世界累計部数1億部超、ハリウッドでの映画化も進行している超人気作の主人公エレン・イェーガーが渇望していた“自由”とは何だったのでしょうか。最終話とこれまでの描写から考察します。
預言者であり殉教者と化したエレン

「別冊少年マガジン」2021年5月号に掲載された最終話「あの丘の木に向かって」をもって11年7か月にわたる『進撃の巨人』の物語は幕を閉じました。細部に読者の解釈に任される箇所が残されてはいましたが、本筋においては「すべてがこうなる運命にあった」と納得できる美しい結末であったと思います。なかでも第90話「壁の向こう側」以降、いわゆる「マーレ篇」と最終章を牽引した主人公エレン・イェーガーの活躍は特筆すべきものでした。本稿では、そんなエレンの行動原理のひとつである“自由”について考えていきたいと思います。
※これより先『進撃の巨人』の物語と結末について、いわゆるネタバレをしていますので、最終回までの本編を未読の方はご注意願います。
パラディ島に住むユミルの民(エルディア人)以外の人類を巨人の集団に踏み潰させる“地鳴らし”の真の目的は、「進撃の巨人」であるエレンを討ち取らせて、かつての仲間たちを外の世界の英雄にするのが目的であったことが、最終話でエレン自身の口から語られました。
これまでの単独で大国マーレとの戦端を開き、敵側にいたジーク・イェーガーと共謀して調査兵団に反旗を翻すなどの不可解な行動はおろか、それ以前の人々の過酷な運命も、第90話「壁の向こう側」で王家の血を引くヒストリアに触れて、“道”を通じて過去と未来を見渡してしまったエレンが、自分を討ち取らせるため、そして巨人の力の源泉である始祖ユミルの解放に必要なある選択をミカサ・アッカーマンにさせるために導いたものだったのです。
いわば「マーレ篇」、最終章以降のエレンは神の啓示を得た預言者であると同時に、自分が見た運命を実現させるための殉教者だったわけです。何より自由を渇望していたはずのエレンが、定められた運命のためにその命を捧げるというのは、皮肉なようにも思えます。しかし、彼にとって自由とはいったいなんだったのでしょうか。