初代『ドラクエ』ラスボスの失敗…「竜王」が勇者に敗れた理由、3つの考察
RPG史上、最も知名度が高いラスボスといえば『ドラゴンクエスト』の「竜王(りゅうおう)」。世界を闇に包み、魔物を支配した首魁・竜王は圧倒的軍勢を擁しながら、たったひとりのロトの血を引く勇者に敗れてしまいました。その理由は一体何なのか? その敗因を考察したいと思います。
竜王が勇者に敗れた理由を考察
RPG史上、最も知名度のあるラスボスといえば『ドラゴンクエスト』の「りゅうおう(竜王)」ではないでしょうか。これほど有名でありながら、彼はロトの血を引く勇者に敗れてしまいました。その原因はなんなのか? 考察すると竜王の策にほころびがみえてきます。今回はその「敗因」について考えていこうと思います。
●配下魔物の配置ミス
勇者が城を出た後、最初にエンカウントする魔物はスライム、スライムベスあたりだと思います。竜王は魔物を統率するもので、その配置も彼の思うがままだったはず。なのになぜ旅立ったばかりで非力な勇者に弱い魔物が対峙するように配置したのか? アレフガルドの国王が住む城であれば竜王を打倒する勢力が現れて当然だし、それを監視できる距離に竜王の城を築城したにもかかわらずスライムの配置は愚策です。最初からメーダ、キメラ、リカントなど最強でなくても将棋でいうところの香車くらいの魔物でも勇者を封殺できたに違いありません。
一方で別の考え方もあるそうで、実はラダトーム城を出発したロトの血を引く勇者以外にも、各町から竜王打倒を掲げた野良勇者がいたというファンによる妄想もあります。
しかし野良勇者は各地域の強い魔物にすぐに倒され、結局生き残ったのが地理的有利をひいたロトの血を引く勇者、つまりラダトーム城で旗揚げした勇者だった、という仮説。
いずれにしてもロト系勇者が順当に成長できるように魔物を配置したのは完全に竜王の采配ミスです。
●勇者を助ける「宝箱」の存在を見過ごす
ゴールドや道具など勇者を助けるアイテムが入っている宝箱。城や町にある宝箱はまだしも、魔物が出現するダンジョンにある”勇者有利”となる宝箱はなぜ存在し、見過ごされたのか? 仮説を立ててみると……。
仮説1:先遣の勇者や旅人が置いていった
ゴールドは彼らのへそくり。道具は不法投棄。仮に次に現れる勇者のために宝箱に隠していったとしても、魔物がそれを見つければ処分するはずなのでこの仮説は考えにくいです。
仮説2:魔物が置いた罠
宝箱の中には「のろいのベルト」など呪いのアイテムも入っています。これを使ってしまうと、呪われて城に入れないというペナルティが付与されてしまいます。魔物がゴールドなどを宝箱に隠し、勇者を油断させたところで呪いのアイテムを入手させるという罠を仕掛けた、もしくは竜王の作戦ではないか? これはあり得る仮説だと思います。
仮説3:魔物の謀反
竜王の支配にヘイトを抱いた魔物が、勇者を助けるために宝箱を置いたという説。もちろんバレれば自分の命はありませんが、ダンジョンの奥に隠せば竜王の目も届かないのかもしれません。竜王が倒され、「ひかりのたま」の効果で自分の身が滅びようとも竜王の悪行を許せなかった自我に目覚めた魔物が宝箱を設置したという仮説。
これはラストダンジョンに最強の武器「ロトのつるぎ」があることにも説得力のある仮説ではないでしょうか。竜王にしてみれば信頼している部下を城内に配置していたはずで、監視も甘かったでしょう。その油断をついた信頼されている上級魔物が「ロトのつるぎ」を隠したとしたら、竜王が獅子身中の虫(しししんちゅうのむし)を見つけられなかったのも無理はありません。
誘拐したローラ姫を人質としてそばに置かなかった理由は?
●ローラ姫をそばに置き人質にしなかった
アレフガルド国王ラルス16世の娘ローラ姫。彼女はゲーム開始以前に魔物にさらわれ洞窟に監禁されました。仮に竜王が王国側の反抗を危惧するのであればローラ姫を人質として手元に置くだけで、王国側は積極的に攻勢にでれない状況だったはずです。
そんな城防衛に大きな役割をもつローラ姫を手元に置かなかった理由はなんなのか?
リメイク版でローラ姫は救出された際「竜王の妻にされそうだった」といった主旨の発言をします。ならばなおさらそばに置いておきそうなものですが、別の場所に隠すように監禁……。ここから推測できるのは「ローラ姫が本妻に見つかっては都合が悪いから隠していた」ということです。
まず100年後の物語『ドラゴンクエストII 悪霊の神々』に竜王のひ孫が登場、つまり『I』で勇者に倒される以前に竜王は子孫を残していたことから本妻がいることは確定しています。人間のローラ姫を「妻に」と口説いていたことから、竜王自身が『ドラゴンボール』のピッコロのように雌雄なく卵を産んで子孫を残すというのは考えづらく、種族は分からないものの妻はいたということになります。
その本妻にバレないようにするため、ローラ姫を人質としてそばに置くことができず、遠く離れた洞窟に隠すほかなかったのではないでしょうか。
(南城与右衛門)