打ち切りかもだけど…絶対面白い! 「全2巻」のマンガ4選
マンガ大国日本には短期連載で終わってしまったものでも名作として語り継がれている作品がたくさんあります。「全2巻」マンガのなかからバトル、ギャグ、青春、ジャンル不明の傑作をピックアップしました。
短い中に作者の宇宙が詰まっている!侮るなかれ「全2巻」マンガ
コミックスのタイトルの隣に「全2巻」という文字に私たちはつい特別な意味を汲み取ってしまいます。すなわち「もしかして、打ち切られてしまったのかな」と。
こと新陳代謝の激しい週刊連載誌においてその傾向は顕著で、数え切れないくらいの全2巻マンガが世の中にはあふれています。本稿では打ち切りかどうかの事実はさておいて全2巻であっても大団円を迎えた作品、あるいは全2巻だからこその読後感を堪能できる作品をピックアップしてご紹介します。
●作者が奇跡と呼んだ衝撃のラスト!『武士沢レシーブ』(著:うすた京介)
「最終回-1グランプリ」なるものが開催されたらぜひともノミネートされてほしい作品が『武士沢レシーブ』です。『セクシーコマンドー外伝 すごいよ!!マサルさん』で注目を集めたうすた京介先生の次回作として注目度も抜群でしたが、20話で最終回を迎えます。
ところがこの作品の評価を一気に変えたのが本人も「実力以上の奇跡」と評する最終回。中盤からバトルマンガ要素が色濃くなった結果、回収すべき伏線を残した状態で最終回に臨まなくてはならなくなったため、ストーリーそっちのけで登場人物までも「最後まで描くのはムリなんじゃ」と心配し始めます。そこからは怒涛のダイジェストに突入し。その後の展開を「年表」でまとめてしまうという前代未聞の快挙(暴挙)を達成したのです。マンガ史に燦然と輝く全2巻マンガの金字塔、ぜひお手にとって確かめてください。
●最高傑作という声も上がる『バオー来訪者』(著:荒木飛呂彦)
「こいつに触れることは死を意味する!これがバオーだッ!!」(バル!バル!)
『ジョジョの奇妙な冒険』で知られる荒木飛呂彦先生の連載第2作目『バオー来訪者』です。全17話という短期連載ながらもストーリーの起伏、クライマックスにかけての盛り上がりまで含め極めて完成度の高い作品でOVA化もされています。なかには『ジョジョ』を差し置いて一番好きな荒木飛呂彦作品に挙げる人もいるほど。
秘密組織ドレスに生物兵器バオーに改造された少年・橋沢育朗が居合わせた超能力少女スミレと共に組織から脱走し、やがて組織を打ち砕くまでを荒木節全開で描き切ります。上に掲げた冒頭のナレーション。(バル!バル!)が効果音なのかバオーの叫びなのかは議論が分かれるところです。
文庫版のあとがきで荒木飛呂彦先生も“ここで「終わり」を保っとくのが一番いい”としているので堂々の「全2巻」完結マンガなのです。
●全2巻で堪能できる奇妙でみずみずしい青春物語!『月曜日の友達』(著:阿部共実)
お次は「ジャンプ」作品を離れて比較的最近の「全2巻」マンガをご紹介。「ビッグコミックスピリッツ」で連載された阿部共実先生の話題作『月曜日の友達』です。
幼児性が抜けないまま中学生になった少女・水谷茜がどこか不気味な同級生・月野透と出会うところから物語は始まります。「超能力が使える」など頓狂なことを言い出す彼と水谷は月曜日の夜に校庭で会う約束をするのですが……シンプルな絵柄に詩的な心情表現がふたりの奇妙な「月曜日の夜」を彩っていきます。誰もが“大人になるちょっと前”に経験した寄る辺ない寂しさ、それを受け入れてくれる友人に出会った喜び、そして生じる過度な期待……みずみずしい痛みがふっとよみがえる傑作です。
●これぞ「全2巻」体験の真骨頂!『ゲレクシス』(著:古谷実)
『行け!稲中卓球部』『ヒミズ』などの作品で知られる巨匠・古谷実先生ですが、その最新作『ゲレクシス』は彼のキャリアでも最も短い連載期間で幕を閉じています。この作品の魅力は全2巻だというのにあらすじをまとめることができないというところ。
バームクーヘン屋さんの店長・大西はある日、素敵な女性に恋をするもなぜか女性は卵型の姿になり、続いて大西自身も「ケツ」みたいな姿に変身してしまい、森の中へと進めば「正気」と名乗る物体に遭遇し……ここまでで1巻です! 果たして続く2巻で物語はどんな結末を迎えたのか。これは「打ち切り」なのか「作者の都合」によるものなのか実は「大団円」だったのか……ぜひとも「体験」して欲しい全2巻マンガです。
「全2巻」だけど面白い作品は「全2巻」だからこそ面白い作品でもあります。あなたの胸にすっぽりハマったオススメの「全2巻」マンガはなんでしょうか。
(片野)