『鬼滅の刃』意外とカジュアルな“鬼化”の誘い「おまえも鬼にならないか?」
『遊郭編』のアニメ放送が心待ちな『鬼滅の刃』では、鬼が人間を勧誘するシーンがあります。そのなかには、「お前も鬼にならないか?」というようなカジュアルな感じのお誘いもあって驚かされます。鬼への勧誘のシーンとその相手のリアクションをご紹介します。
「お前も鬼にならないか?」2度も勧誘されたのは…
『遊郭編』のアニメ放送が心待ちな『鬼滅の刃』には、心が震える名言が山盛りですが、このセリフには驚いた人も多いのではないでしょうか?
「お前も鬼にならないか?」
まるで、「ごはん食べに行かない?」「野球部に入らない?」程度のカジュアルさです。「ユー、鬼になっちゃいなよ」みたいなノリで鬼に誘うのは、アリなのでしょうか……?
そもそも鬼を作り出すことができるのは鬼の始祖、鬼舞辻無惨(きぶつじ・むざん)だけです。
鬼たちは無惨を頂点に「十二鬼月(じゅうにきづき)」とよばれる上弦の鬼(壱~陸)と下弦の鬼(壱~陸)、その下に異能(いのう)の鬼、そのほかの鬼という序列になっています。多くの人間を喰らうほど強くなり、力をつけると血鬼術(けっきじゅつ)という特殊な能力を使うことができるようになるのです。そして、抜きんでた力を持つ上弦の鬼たちには、人間を鬼に勧誘することが認められています。
もし、上弦の鬼に勧誘されて、「YES」と答えたらどうなるのでしょう?
鬼たちは無惨と離れていても意思疎通ができるようになっており、まずは、無惨に勧誘したいという意思を伝え、無惨がそれを承認すれば、上弦の鬼の血が人間を鬼化できる血に変化。その血を与え、人間を鬼にします。ただし、それは無惨の血に順応できれば……の話。無惨の血を投与されると、細胞が壊れて死んでしまうことが多いそうなので、鬼になるのも命がけなのです。
本稿では、意外とカジュアルなこともある鬼の勧誘と、その際の相手のリアクションをご紹介します。
※この記事では、まだアニメ化されていないシーンの記載があります。原作マンガを未読の方はご注意ください。
●上弦の参・猗窩座→炎柱・煉獄杏寿郎「お前も鬼にならないか?」
無限列車を止め、乗客を救った杏寿郎たちの前に現れた上弦の参・猗窩座(あかざ)は、煉獄杏寿郎(れんごく・きょうじゅろう)の強さに惚れこみました。鬼になって「百年でも二百年でも鍛錬し続け」、「至高の領域」を目指そうと誘うのです。弱い人間を嫌い、強さを求める猗窩座らしい考え方といえるでしょう。
対する杏寿郎は、「老いることも死ぬことも、人間という儚い生き物の美しさだ」と答えます。そして、「俺は如何なる理由があろうとも鬼にはならない」と、突っぱね、激しい戦いが始まりました。
拳で杏寿郎のみぞおちを貫き、勝ちを確信した猗窩座は再び、「鬼になれ!! 鬼になると言え!」と叫びます。1度ならずも2度も鬼に勧誘するとは、猗窩座はよほど杏寿郎が気に入ったのでしょう。
杏寿郎は、己の強さは、「弱き人を助けるため」のものであるという母の教えを思い出していました。弱さをも愛した杏寿郎と弱さを嫌った猗窩座。「強くある」ことを自分に課したふたりですが、歩んだ道はまったく違うものになりました。
この勧誘は、ともに強さを磨く仲間になって欲しいという猗窩座のラブコールだったと言えるでしょう。
●上弦の陸・妓夫太郎→炭治郎「そうだお前も鬼になったらどうだ!! 妹のためにも!!」
『鬼滅の刃 遊郭編』で戦うことになる上弦の陸・妓夫太郎(ぎゅうたろう)は、激しい戦いで満身創痍になっている炭治郎を「虫けら」「ボンクラ」「のろまの腑抜け」「役立たず」とののしりながら、いたぶり、あざ笑いながら、このセリフで侮辱しました。
音柱・宇髄天元(うずい・てんげん)も伊之助も善逸も戦いでひん死の状態でしたし、禰豆子も戦える状態ではありません。。そんな絶望的な状況でも、炭治郎は諦めませんでした。炭治郎は、「ひとつ違えば、いつか自分自身がそうなっていたかもしれない状況」だと、妓夫太郎のなかに自分の姿を見、だからこそ自分が妓夫太郎の頸を斬るのだと最後の力を振り絞ったのです。
これは勧誘を装った挑発のようです。妓夫太郎のことですから、もしも炭治郎が妹の禰豆子を助けるために鬼になることを決心したとしても、さんざんいたぶった挙句に約束は反故にするのは目に見えていますね。
●上弦の陸(当時)・童磨→妓夫太郎「お前らに血をやるよ。二人共だ。“あの方”に選ばれれば鬼となれる」
遊郭の最下層で生まれ育った妓夫太郎と堕姫(だき)の兄妹は、死の一歩手前で童磨(どうま)に出会い、鬼となりました。妓夫太郎は、「鬼になったことに後悔はねぇ」「俺は何度生まれ変わっても必ず鬼になる」と回想しています。彼にとっては、つらすぎた人間の人生よりも、鬼としての時間の方がよっぽどマシだったのでしょう。
他人の痛みや感情に無頓着な童磨なので、この勧誘は冷やかしか単なる気まぐれかもしれません。それでも妓夫太郎にとっては、鬼になることが、たったひとつの救いだったのです。
黒死牟は勧誘も熱心!? 鬼にも美学がある?
●上弦の壱・黒死牟→霞柱・時透無一郎「我が末裔よ。あの方にお前を鬼として使って戴こう」
無限城での戦いで無一郎に出会った上弦の壱・黒死牟(こくしぼう)は、自分の子孫である時透無一郎(ときとう・むいちろう)の剣の技の素晴らしさに加え、精神力に感服し、鬼に引き入れようとしました。最年少で柱になった天才剣士、無一郎の強さを一目見て感じたのでしょう。
無一郎は自分が子孫だと言われて一瞬、動揺しますが、すぐに気持ちを鎮め、「何百年も経ってたら、お前の血も細胞も、俺の中にはひとかけらも残っていないよ」と「霞の呼吸 漆ノ型 朧(おぼろ)」を繰り出します。その技を「流麗で美しい」と感じた黒死牟は、「月の呼吸 壱ノ型 闇月・宵の宮」で応戦。無一郎の腕を切り落とし、そして、このセリフを言うのです。
黒死牟は、子孫に対する愛着も多少はあったようですが、それよりも上弦の鬼が柱や鬼殺隊に倒され手薄になったところの補強要員として、無一郎が「役に立つ」と思って勧誘した節が強いように感じます。
●上弦の壱・黒死牟→岩柱・悲鳴嶼行冥「鬼となることで、肉体の保存…、技の保存ができるのだ…。何故それが分からぬ…。愚かな…」
もともと黒死牟自身も、無惨に勧誘されて鬼になっています。弟の縁壱(よりいち)に追いつきたいと鍛錬を重ねましたが、痣が出たことで自分には時間が残されていないと焦っていたところに無惨が付け込んだのです。
鍛錬し、強くなることを重要視する黒死牟は、鬼殺隊最強と言われる悲鳴嶼行冥(ひめじま・ぎょうめい)に興味を持ったのでしょう。しかし悲鳴嶼は、「我らは人として生き、人として死ぬことを矜持としている」「貴様の下らぬ可燃を至上のものとして他人に強要するな」と、勧誘を一蹴しました。
黒死牟にも、強さを求めるための永遠の時間を得た鬼としての美学があるのでしょうが、それは悲鳴嶼には、まったく興味のないことだったのです。
* * *
永遠の命と引き換えに、人に仇なす鬼になる……。この究極の選択、あなたなら、どうしますか?
※禰豆子の「禰」は「ネ」+「爾」が正しい表記
※煉獄の「煉」は「火+東」が正しい表記
(山田晃子)