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映像化不可能とされた『宮本から君へ』実写化はなぜ成功?重要だった「敵キャラ」の演技

マンガ原作の実写映画には、いくつかの成功パターンがあります。原作ファンも驚くアクションシーンで魅了した『るろうに剣心』、人気キャスト同士の演技バトルが話題となった『デスノート』など、実写ならではの見どころが用意されていました。青年マンガ『宮本から君へ』は、どのようにして実写映画化されたのでしょうか?

池松壮亮&蒼井優の実力派コンビで映画化

映画『宮本から君へ』ビジュアル (C)2019「宮本から君へ」製作委員会
映画『宮本から君へ』ビジュアル (C)2019「宮本から君へ」製作委員会

 マンガ家・新井英樹氏の人気コミックを実写映画化した『宮本から君へ』(2019年)が、2021年5月18日(火)よりNetflixで配信されます。新米サラリーマンの宮本浩(池松壮亮)が仕事や恋に七転八倒する姿を描いた2018年放送のTVドラマ版に続き、劇場版は宮本と年上の恋人・中野靖子(蒼井優)との恋の行方にフォーカスを絞り、物語は衝撃的な展開をみせていきます。

 新井氏が描く青年マンガは、『愛しのアイリーン』や『ザ・ワールド・イズ・マイン』など、振り切った作風で知られています。熱心なファンから愛読されている新井氏の連載デビュー作『宮本から君へ』ですが、過激な内容から映像化は不可能とされてきました。特に劇場版で描かれた物語後半は、激しいバイオレンスシーンがあるために実写化は容易ではありませんでした。

 不可能だと思われていた『宮本から君へ』の実写映画化は、どのようにして実現したのでしょうか?

「両刃の剣」の側面もある、人気マンガの実写化

「製作委員会」方式が映画界に定着した近年は、マンガ原作の映画化がとても増えています。ベストセラーとなった人気マンガなら、「あの人気作がついに実写化!」というだけで大きな話題となります。知名度のある原作は、製作側としては企画をスムーズに通すことができ、出資を集めやすいという大きなメリットがあります。また、原作を出している出版社とのタイアップなども図れます。

 しかし、人気マンガほど熱烈なファンが多く、安易な実写化企画には敏感に反応します。原作ファンの嗅覚は、非常に鋭いのです。キャスト、監督、脚本家たちから原作へのリスペクトが感じられないと、容赦ありません。人気マンガの実写化は「両刃の剣」だと言えるでしょう。

 その点に関しては、劇場版『宮本から君へ』に主演した池松壮亮さんも蒼井優さんも、原作ファンでさえ驚くような、尋常ではない熱い熱い演技を見せています。うかつに近づくと、火傷してしまいそうなほどです。脚本だけでなく、原作も相当に読み込んでいたことがうかがえます。

 映画序盤の宮本と靖子との赤裸々な恋愛シーンだけでなく、巨漢のラガーマン・真淵拓馬(一ノ瀬ワタル)が登場してからの壮絶な場面の数々も、R15ギリギリの表現でリアリティーたっぷりに描かれています。宮本と靖子の感じる体と心の痛みが、観る側にもヒリヒリと伝わってきます。

 原作マンガにおいて、いちばん実写化が難しい問題のシーンを、いっさい手を抜くことなく物語の核として描いてみせたことが、劇場版『宮本から君へ』の大きな魅力だと言えるでしょう。原作の知名度に頼った実写化ではなく、キャスト&スタッフの原作愛があっての実写化であることが分かります。

【画像】池松壮亮さんの熱演がすごい、映画作品たち(6枚)

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