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『ウルトラセブン』ちゃぶ台宇宙人が登場する「狙われた街」の、現代に通じるテーマとは?

1960年代は街に不穏さが漂う時代だった

『ウルトラセブン』第8話に登場したメトロン星人をグッズ化した、「メトロン星人 ちゃぶ台つき」(ブルマァク)
『ウルトラセブン』第8話に登場したメトロン星人をグッズ化した、「メトロン星人 ちゃぶ台つき」(ブルマァク)

 実相寺監督は『ウルトラマン』でも、第23話「故郷は地球」や第35話「怪獣墓場」など怪獣に感情移入した印象的なエピソードを撮っていましたが、『ウルトラセブン』では「狙われた街」が初参加でした。現在は欠番扱いとなっている第12話「遊星より愛をこめて」の他にも、第43話「第四惑星の悪夢」、第45話「円盤が来た」といった優れたエピソードを残しています。

 でも、「ウルトラマン」シリーズを代表する名脚本家・金城哲夫氏とのタッグ作は、「狙われた街」の1作だけ。それゆえに、両者の異才ぶりがより際立つ回として記憶されます。

 1960年代後半はベトナム戦争が始まり、金城氏の故郷である沖縄は米軍の出撃基地となっていました。また、国内ではベトナム戦争に反対する学生運動が盛り上がった時代でもあります。

 一見すると平凡な街「北川町」の古いアパートに、危険なテロ思想を持つ男が潜んでいた……。非現実的世界を描いたSFドラマ『ウルトラセブン』ですが、「狙われた街」には現実味のあるリアリティが感じられます。市販されている商品を利用した無差別テロは、1977年の「青酸コーラ殺人事件」や、1984年の「グリコ・森永事件」などを彷彿させるものがあります。

 アンヌ隊員の叔父の葬儀シーンでは、他にも怪事故が次々と発生していることが語られますが、『ウルトラセブン』の放送が始まった1967年には「ウルトラ山田」と名乗る爆弾魔による爆破事件が相次ぎ、この事件は未解決のままです。また、1965年には18歳の少年が渋谷にある銃砲店を襲い、警察隊と激しい銃撃戦を行なったライフル魔事件が世間を震撼させました。社会派映画を思わせる、シリアスな設定が印象に残る「狙われた街」です。

 実相寺監督と組むことが多かった脚本家の佐々木守氏は、大島渚監督のATG映画にも参加していたので、金城氏も少なからず触発されていたのではないでしょうか。三島由紀夫のSF小説『美しい星』からの影響も感じさせます。

あっさりと終わるメトロン星人との戦い

 たそがれどきは逢魔時、昼と夜との境目が消える時間帯です。真っ赤な夕焼けが美しい北川町を舞台にした「狙われた街」は、『ウルトラマン』『ウルトラセブン』を人気番組へと導いた金城哲夫という“太陽”と、ATG映画でアングラ色の強い映画を撮ることになる実相寺監督という“闇”が融合しあった作品だとも言えそうです。ちゃぶ台を挟んで語らうふたりの宇宙人と、金城氏と実相寺監督がどこか重なって感じられます。

 ちゃぶ台での討論の後、メトロン星人とウルトラセブンとの戦いは拍子抜けするほど、あっさりと終わります。そして、番組の最後には浦野光さんの語る有名なナレーションが流れます。この最後のナレーションは、金城氏の書いた脚本にはなく、実相寺監督に頼まれて佐々木氏が書き加えたものだと言われています。

「メトロン星人の地球侵略計画は、こうして終わったのです。人間同士の信頼感を利用するとは、恐るべき宇宙人です。でも、ご安心ください。このお話は、遠い遠い、未来の物語なのです。え、なぜですって? 我々人類は今、宇宙人に狙われるほど、お互いを信頼はしていませんから。」

 経済格差、人種ヘイト、弾圧される民主化運動、そしてコロナ禍における自粛警察……現在の世界はバラバラに分断された状態です。この地球がメトロン星人に狙われる心配は、まだまだ先のことになりそうです。

(長野辰次)

【画像】4Kで蘇る『ウルトラセブン』と、アンヌ隊員らが語る制作の舞台裏(6枚)

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