ウルトラ怪獣の人気者「ゴモラ」…変遷の果ての「大出世」で、人類の味方に?
ウルトラ怪獣の中でも人気の高い怪獣「ゴモラ」。しかし、時代の移り変わりのなかで、その人気のポイントは少しずつ変化していきました。今回は、ゴモラの初登場からデザイン・立ち位置の変遷、そして時には主役級の扱いとなるほどの、近年の「大出世」までを振り返ります。
ゴモラが歩んできた苦難の道
ウルトラ怪獣の「ゴモラ」というと、まずは三日月を思わせる形状の角を思い出す人が多いと思います。この部分は黒田長政の兜がモチーフだそうで、シルエットだけでゴモラだとわかる特徴的なパーツですね。
その攻撃方法は単純明快。怪力とシッポによる攻撃のみ。火炎放射とか電撃のような飛び道具なしで、いたってシンプルなストロングスタイルです。このシッポは特殊で、切られてもしばらくの間は動き回って暴れるほどの生命力を有していました。
ゴモラはジョンスン島に生息していた古代恐竜ゴモラザウルスの生き残りで、万博に展示するため生きたまま捕獲しようという、人間の身勝手な考えで日本まで連れて来られたところを逃走した……という経緯があります。こういった事情から、ゴモラは他の怪獣のような一方的な加害者でなく、むしろ被害者だと言えるかもしれません。
ただゴモラのスゴいところは、被害者であってもウルトラマンと互角に戦うほどの強力怪獣だというところです。『ウルトラマン』(1966年)で唯一、2週続けて戦ったのはゴモラだけ。つまりウルトラマンが1話で唯一倒せなかった怪獣です。
こういった事情もあって、数ある怪獣のなかでゴモラの人気は比較的いつも上位にいました。『ウルトラマン』にあまり詳しくない人も知っているレベルの怪獣でしょう。
ただ、他の人気怪獣と同じく、良いリメイク造形に恵まれない時期もありました。映画『ウルトラ6兄弟VS怪獣軍団』(1974年製作)では、念力を使うという設定が加えられたり、『ウルトラマン80』(1980年)では形状もだいぶ異なったせいからか、「〇代目」という肩書でなく「ゴモラII」という名前になっています。
その他にも『ウルトラマン』の怪獣がリメイクデザインされた『ウルトラマンパワード』(1993年)で、「パワードゴモラ」という個体が登場しました。
そんなゴモラが往年通りのデザインで復活したのが『ウルトラマンマックス』(2005年)です。ところが、本来は2メートルほどのサイズが巨大化したという設定で、怪獣というよりも珍獣という扱いでした。これは、あえて初代とは異なるイメージで登場させたいというスタッフの意図だったそうです。
しかし、この着ぐるみを流用した『ウルトラマンメビウス』(2006年)では、初代の出身地であるジョンスン島に出現するなど、ようやく設定とデザインが一致するゴモラが登場しました。こうして、21世紀になってゴモラはようやく完全復活したわけですが、その後、それまで歩んできた道以上の意外な出来事が待っていたのです。