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伝説の特撮『魔人ハンターミツルギ』。時代劇と巨大ロボが融合も、現場は逼迫して…?

着ぐるみヒーロー全盛時代の1973年、ストップモーションアニメでロボットヒーローの戦いをコマ撮りするという特撮番組がありました。評価は賛否ありますが、果敢な挑戦は特撮の歴史にその名を刻んでいます。

「特撮+時代劇+巨大ロボ」のアニクリエーション

『魔人ハンターミツルギ』(東宝レーザーディスク)
『魔人ハンターミツルギ』(東宝レーザーディスク)

 特撮番組『魔人ハンターミツルギ』(フジテレビ)は、1973(昭和48)年1月~3月まで、12話が放送されました。地方は5局ネットのみ、再放送も少ないそうで知らない人は多いかもしれません。しかしカルトなファンも多く、ビデオやLD、DVDも発売されています。

 第2次怪獣ブームで特撮が百花繚乱のなか、『魔人ハンターミツルギ』は他との差別化をはかるため、「特撮&時代劇&アニクリエーション」で勝負に出ます。

 アニクリエーションとは、番組制作会社の国際放映が名づけたもので、人形を手で動かしてコマ撮りを繰り返すストップモーションアニメのことです。映画『キングコング』(1933)に代表される手法ですが、これを怪獣との戦闘シーンに取り入れて週1回30分の放送を試みるというのは異例中の異例でした。

 物語は江戸時代、さそり座から飛来した宇宙忍者サソリ軍団が妖術と巨大怪獣を使って徳川を倒し、日本の占領を画策。徳川家康から防衛を託されたミツルギ一族の長老は、銀河、彗星、月光の忍者三兄妹に、智・仁・愛の秘刀を授け、日本の平和を守るよう命じます。兄妹が秘刀を打ち合わせると巨大神ミツルギ(身長20メートル、体重4万トン)に合体変身し、怪獣に立ち向かいます。

●着ぐるみにはない不思議な魅力?

 当時幼かった筆者も同番組を観ていました。ドラマパートでは役者たちの芝居を中心に展開しますが、やはり一番の楽しみは、アニクリエーションで描かれた巨大神ミツルギと怪獣のバトルシーンです。ミツルギはクワガタのような角が特徴の兜をした少し西洋風の甲冑姿。胸からは「火炎弾」と呼ぶミサイルが飛び出します。珍しい風貌のヒーローで、不思議な魅力を醸し出していました。

 シーンの動きはカクカクしていますが、妙に新鮮でした。コマ撮りには利点もあって、怪獣が骸骨になっても動きますし、空中でバラバラに切られても、切られた部位が単体で動くのです。着ぐるみでは難しい演出や、不自然な動きもアニクリエーションなら可能なのです。

 DVDがリリースされた際、筆者は当時を懐かしみながら観たのですが、ミツルギと怪獣のバトルは繊細で、例えばミツルギの指一本一本を折る動作がハッキリわかるシーンなどは、「ここだけ撮るのに何時間かけたのだろう?」と唸ってしまうほどです。

 他にも、動きに合わせて舞い上がる土煙や怪獣の口から飛び出る火炎の具合は困難だったでしょう。おそらく何度も撮り直しをしたのではないでしょうか。怪獣もわざと汚く見えるデザインに造って野性的にしたり、火薬も黒い煙と白い煙を調合して薄暗いセットに合わせるなど、スタッフのこだわりはかなり強かったそうです。

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