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人類に味方した『仮面ライダー』の怪人たち。いつでも苦悩の対象だった?

ヤラレ役のイメージが強い仮面ライダーシリーズの怪人たちですが、なかには人類を救うために尽力してきた者たちもいました。彼らが組織を離脱して、ヒーロー側となった背景にはさまざまな事情があります。今回は味方として登場した怪人たちを振り返ります。

ドジっ子ぶりが人気の「モグラ獣人」

モグラ獣人が登場する第5話「地底から来た変なヤツ!」が収録された、『仮面ライダーアマゾン Vol.1』DVD(東映)
モグラ獣人が登場する第5話「地底から来た変なヤツ!」が収録された、『仮面ライダーアマゾン Vol.1』DVD(東映)

 世界征服を企む悪の秘密結社「ショッカー」が誕生して50年……「仮面ライダー」と対になる存在として数々の“怪人”が登場してきましたが、必ずしも悪の権化として描かれてきたわけではありません。なかには人類に味方し、悪の組織と対立する道を選んだ者たちもいます。

 そもそもシリーズの始まり「仮面ライダー1号」は、ショッカーに改造手術を施された改造人間。本来ならショッカーの幹部になるはずでしたが、脳手術を受ける直前に脱出し、仮面ライダーとしてショッカーとの戦いを始めました。

 一方、悪の組織に所属していながら、完全な寝返りを行い仮面ライダー側についた怪人もいます。その最初となる存在が1974年放送『仮面ライダーアマゾン』に登場したモグラ獣人です。

 同作の第5話「地底から来た変なヤツ!」で初登場したモグラ獣人は、当初は世界征服を企む悪の組織「ゲドン」所属の怪人でした。ボスである十面鬼ゴルゴスより、世界征服の鍵である「ギギの腕輪」をアマゾンから強奪するように命令を受けます。しかし強奪は失敗し、挙げ句の果てには、うっかり口を滑らせたことからゲドンの狙いは「ギギの腕輪」であることがアマゾンにバレてしまいます。

 このドジっ子具合が人気の一因でもありますが、強奪失敗の報いとして、モグラ獣人にとっては最も苦痛である“天日干し”の刑に処されます。その際、アマゾンに救われたことから徐々に心を開き、ゲドンを離反。情報収集などでアマゾンに協力するようになります。アメとムチ、北風と太陽の要領で味方となった怪人でした。

 平成以降は、 『仮面ライダー電王』に登場したイマジンのように、仮面ライダー側に怪人がつくことが主流になってきました。そのなかでも視聴者に衝撃を与えたのが2003年放送『仮面ライダー555(ファイズ)』ではないでしょうか。同作はヒーロー側だけでなく、怪人=オルフェノクにも焦点を当てたドラマが話題を呼んだ作品で、人間として生きようと葛藤するオルフェノクのキーパーソン「木場勇治」は今なお人気の高いキャラクターです。

第34話「真実の姿」が収録されている『仮面ライダー555 VOL.9』 DVD(東映)
第34話「真実の姿」が収録されている『仮面ライダー555 VOL.9』 DVD(東映)

 そして、視聴者の意表をついたのが主人公・乾巧がオルフェノクだったという設定です。劇場版で先行公開され、TV本編では第34話「真実の姿」で明らかになりました。怪人が仮面ライダーになる設定は、仮面ライダー1号と同じくシリーズの原点でしたが、乾巧の正体は物語後半まで明かされず、以降も人間と怪人のあるべき姿に葛藤を続ける重厚なストーリーが視聴者を釘付けにしました。

 2016年放送『仮面ライダーエグゼイド』にも、人気怪人が登場します。同作の敵は人類滅亡、世界征服を企む「バグスター」。しかし第17話で登場した、ハンバーガーがモチーフのバガモンバグスターは違いました。バグスターたちは、バグスターウイルスが感染した人間から分裂し、宿主である人間を死に追いやり完全体になることを目的にしていますが、バガモンバグスターにとってはそんなことは一切無関係です。

 宿主である小星作も彼を可愛がり、小星の病が進行した時にはバガモンバグスターが看病したり、小星を救うためにわざと悪役を演じ倒されようとしたりと、実の親子のような特異な関係を築いています。

 最終的には、悪のライダー・ゲンムに非情にも倒されてしまいますが、そのことが敵側の内部分裂を誘発することにつながり、隠れたキーパーソンとしても活躍した怪人です。

 2021年でシリーズ放送開始50周年を迎えた仮面ライダーシリーズのなかで、やられ役のイメージが強い怪人たちですが、それぞれの目的、バックストーリーを描く作品も増え、より一層魅力が際立ったキャラクターが登場しています。

(椎名治仁)

【画像】時代をこえて記憶される、「人類に味方した」仮面ライダー作品の怪人たち (5枚)

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