見たものを「猫?」と錯覚してしまう… もしこのまま悪化したら?
漫画家の迷子さんによる描き下ろしエッセイ『妄想猫観察』。道ばたのビニール袋、草陰の大きめの石……目に入った物を、猫だと錯覚してしまう迷子さん。もしこのまま悪化していったら……。
視界に入ったものを「猫」と錯覚する

なんでも猫に見える。
道ばたのビニール袋、草陰の大きめの石、適当に置いた鞄や上着。実際似ていても似ていなくても、視界の端に猫っぽい大きさの物が入り込むと一瞬脳が猫を期待をしてしまうのだ。仕方が無い。「道路のまん中に猫みたいな物が腹を出して寝ているなあ、でもどうせ猫じゃないんだろうなあ」と思って近寄ったら本当にただ寝ている猫だった時は仰天したが、そういうことは稀である。なお猫は端に移動させておいた。とても迷惑そうな様子であった。
話を戻そう。実は最近、このなんでも猫に見える症状が激しくなってきた。もはや大きさなどあまり関係がない。手始めに雲なんかは当然として、コンビニに並べられた渦巻きパン、こんもりとした植え込み、丸みを帯びた家、ホームセンターの細々した謎工具。図書館の暗がりに置かれたワゴン。至る所に大小様々な猫がいるのである。
まだ「視界の端に入り込んだときに一瞬猫だと思う」という程度で済んでいるが、しかし、もしもこの先悪化していったとしたら。焦点を合わせても猫だとしか思えなくなってしまったら、どうしたらいいのだろう。
つまりコンビニに猫が並び、家の植木として猫が植わり、家々は猫ハウスとなり、ホームセンターにミニ猫がごちゃごちゃ売られており、図書館の暗がりには猫がいる、ということである。
……いや、あんまり問題じゃ無いかもしれない。よく考えたら望むところな気もするので、虚空に猫が見えると言いはる人を見ても優しく見守っておいて欲しい。その人は楽園にいこうとしているのだ。
(迷子)