『ゴジラ対ヘドラ』公開から半世紀。異色づくめだった「公害怪獣」との戦い
ゴジラシリーズのなかでも異色作として知られているのが、1971年に公開された『ゴジラ対ヘドラ』です。ヘドロから生まれた公害怪獣ヘドラの不気味な造形に加え、1970年代ならではのサイケデリックな雰囲気が魅力的な作品です。公開から50年を迎えた『ゴジラ対ヘドラ』を振り返ります。
日米の架け橋となった坂野義光氏

ハリウッド版ゴジラが大活躍する、レジェンダリー・ピクチャーズ製作のモンスターバースがクライマックスを迎えます。2021年7月2日(金)より、『ゴジラvsコング』が日本でもようやく劇場公開。小栗旬さんのハリウッドデビューをはじめ、盛りだくさんな話題で注目を集めています。
モンスターバースの第1作となる『GODZILLA ゴジラ』(2014年)ではプロデューサー、続く『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』(2019年)ではエグゼクティブプロデューサーを務めたのが坂野義光氏です。日米の架け橋となった功労者です。
坂野氏は、ゴジラシリーズ第11作『ゴジラ対ヘドラ』(1971年)の監督としても知られています。劇場公開から50年、異色作として根強い人気を誇る『ゴジラ対ヘドラ』を振り返ります。
強烈だった主題歌「かえせ!太陽を」
黒澤明監督の『隠し砦の三悪人』(1958年)などで助監督を務めた坂野監督にとって、『ゴジラ対ヘドラ』は念願の監督デビュー作でした。ゴジラシリーズ第1作『ゴジラ』(1954年)で描かれていた「反戦」「反核」といったメッセージ性に感銘を受けていた坂野監督は、子供向けの興行「東宝チャンピオンまつり」の一本となっていたゴジラシリーズに、再び強いテーマ性を持ち込みます。
海を汚すヘドロから生まれ、工場の煙突から排出されるスモッグを吸って大きくなる公害怪獣ヘドラを大暴れさせることで、85分という短い上映時間のなかに「環境問題」というテーマが明確に描かれています。1970年に光化学スモッグによって都内の女子高生たちが集団で倒れた事件など、当時の社会問題を物語に取り入れています。
ゴーゴークラブで、ヒロインのミキ(麻里圭子)が歌う「かえせ!太陽を」は強烈なメッセージソングです。「汚れちまった海 汚れちまった空」という歌詞は、一度耳にすると忘れられません。カルト映画扱いされがちな『ゴジラ対ヘドラ』ですが、米国では「早くから環境問題を訴えた映画」として人気があるそうです。