マグミクス | manga * anime * game

「実写化」の歴史を変えたマンガ原作映画3選。「不安感」のイメージを覆した要因は?

「実写化=不安」という時代は終わりを迎えつつあります。映像技術の革新や製作陣の熱意によって、ここ10年ほどでマンガ作品の実写化は驚くべき進化を遂げています。これまで難しいとされてきたバトルマンガの実写成功例を3作ご紹介します。

マンガの実写化のイメージを覆したのは……製作陣の原作愛!

 ここ10年ほどで「人気マンガの実写化」に対するイメージが大きく変わりました。ひと昔前なら「実写化」という言葉には多かれ少なかれ「不安感」が内包されていたはずです。しかしここ数年、映像技術の飛躍的な進歩によって「実写化不可能」とされてきた少年マンガが次々と実写化されています。

 最近では『ONE PIECE』(原作:尾田栄一郎)や『機動戦士ガンダム』シリーズの実写化も発表されましたが、期待する声は多くとも、懸念の声は一時期ほどではありません。今回は、「マンガの実写化」に長らくまとわりついていたネガティブなイメージを払拭した偉大な作品を紹介して振り返ります。

●今や21世紀を代表するアクション映画『るろうに剣心』シリーズ

現在上映中の『るろうに剣心 最終章 The Final』 (C)和月伸宏/集英社 (C)2020映画「るろうに剣心 最終章 The Final/The Beginning」製作委員会
現在上映中の『るろうに剣心 最終章 The Final』 (C)和月伸宏/集英社 (C)2020映画「るろうに剣心 最終章 The Final/The Beginning」製作委員会

「実写化」の枠を飛び越え、今や邦画を代表する傑作アクションとして幅広い層から支持を得ているのが大友啓史監督による『るろうに剣心』シリーズ(原作:和月伸宏)でしょう。

 キャスティング、アクション、脚本、カメラワーク、どれも映画として評価が高い本作。息つく暇のない殺陣シーン、垂れた前髪より覗く緋村剣心(演:佐藤健)の虚ろな双眸……冒頭の時点でもうゾクゾクするほど蠱惑的。また屋台骨であるアクション監督・谷垣健治氏による演出も常識を覆すものばかりです。

“原作のコマとコマの間に存在するであろう細かな動きをこちら側で補い、作っていく”ことを念頭においたというアクションは、VFX(視覚効果)に極力頼らず、ともすればリアリティを壊しかねない必殺技(劇中で言えば「九頭龍閃」など)を見事にスクリーン上で再現したのです。その人気は国内を飛び越え、第24回上海国際映画祭の特別招待作品となっています。

●“柔らかくて鋭利”を再現!最先端技術を結集した戦慄の問題作『寄生獣』

実写版『寄生獣』DVD『寄生獣 DVD 豪華版』DVD(東宝)
実写版『寄生獣』DVD『寄生獣 DVD 豪華版』DVD(東宝)

 『るろうに剣心』とは対照的に、VFX技術で観客を驚かせたのが2014~2015年公開の山崎貴監督作品『寄生獣』(原作:岩明均)2部作です。原作終了から約10年の時を経ての実写化ですが、最新VFX技術により、ミギーをはじめとする寄生獣たちの独特の「柔らか」と「鋭利」を併せ持つ質感を見事に再現。「顔ぱっくり」の捕食シーンも実に滑らかで、膀胱が為す術もなく縮みあがります。

 こちらはコナミの最新スキャンシステムを監督が頼み込んで使用させてもらったのだとか。またミギーを演じた阿部サダヲのモーションキャプチャーに使用されたシステムはスクウェア・エニックスから借り受けて制作されています。日本ゲーム業界の最高峰の技術、そして監督の並々ならぬ執念によって実写版『寄生獣』は産み落とされたのです。

●原作がないのに「実写化」が成功…? 『岸辺露伴は動かない』の衝撃

ドラマ『岸辺露伴は動かない』 (C)LUCKY LAND COMMUNICATIONS/集英社 (C)NHK・PICS
ドラマ『岸辺露伴は動かない』 (C)LUCKY LAND COMMUNICATIONS/集英社 (C)NHK・PICS

 最後にご紹介するのはNHK総合で2020年末に放送された『岸辺露伴は動かない』(原作:荒木飛呂彦)の実写ドラマ。本作は『ジョジョの奇妙な冒険』第4部のスピンオフで、漫画家・岸辺露伴(演:高橋一生)が主人公。全3回のなかでも第2話「くしゃがら」はとりわけ大きな話題を呼びました。

 なにせ原作マンガが存在しない「実写化」だったのです。いったい何を言っているのか分からないかもしれませんが、こちらは元々ノベライズ版のみのエピソードであり、荒木先生の原作はないのです。

 ところが森山未來さん演じる志士十五があまりにも「ジョジョ」(佇まいのうねり、瞳孔の開き具合)だったため、視聴後には「素晴らしい“実写化”だった」という感覚に陥るほどのクオリティでした。まさに「実写化」の可能性を広げてくれた記念碑的な作品といえるでしょう。

 ここまで紹介した作品はどれも「実写化」のイメージを底上げし、その可能性を大きく広げた偉大な作品です。これらの実現には映像技術の進歩、そして製作陣の原作愛が不可欠でした(あと、お金)。「実写化」であることを忘れてしまうほど面白い……それこそが、真の意味での実写化成功といえるかもしれません。

(片野)

【画像】バトルものだけじゃない! 実写化で人気を集めたマンガ作品たち(6枚)

画像ギャラリー