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今週「金ロー」はアニメ『おおかみこども』 子供だけでなく、親の成長も描く

子育てのなかの、かけがえのない瞬間

家族3人が心のままに雪のなかを駆けるシーン。『おおかみこどもの雨と雪』より (C)2012「おおかみこどもの雨と雪」製作委員会
家族3人が心のままに雪のなかを駆けるシーン。『おおかみこどもの雨と雪』より (C)2012「おおかみこどもの雨と雪」製作委員会

 物語の舞台は東京都国立市から、富山県へと大きく移動します。富山県は細田監督の生まれ故郷です。花は子供たちの将来のことを配慮して、山奥の古民家で暮らし始めます。雪と雨が成長し、人間として生きるのか、それとも自然界で生きるのか、どちらも選択できるようにと考えたのです。

 山里に移住しての初めての冬。空から降る雪が一面に積もった光景に、子供たちは大はしゃぎ。オオカミに姿を変えて、四つ足で駆け出します。花も一緒に走ります。母子3人が感情の赴くままに雪山の斜面を駆け下りるシーンに、高木正勝氏のピアノ演奏が流れ、とても感動的です。このときの3人は屈託なく、心の底から大笑いします。

 子育ては大変。でも、こんなかけがえのない瞬間があるから、母親は自分を奮い立たせることができるのかもしれません。

 物語は雪と雨が小学校に入学し、それぞれが「自分は人間なのか、それともオオカミなのか」というアイデンティティーに悩み、自分の進む道を傷つきながら模索するという、より難しいフェーズへと移行していきます。アニメーション表現で、登場キャラクターたちの揺れ動く心理をとても繊細に描いていることに驚きを覚えます。

花たち家族を見守る父性的存在

 細田監督は、『時をかける少女』(2006年)、『サマーウォーズ』でもタッグを組んだシナリオライター・奥寺佐渡子さんとの共同脚本作として、『おおかみこども』を書き上げました。本作には子供たちだけでなく、親もまた子育てすることで成長を遂げることが描かれています。成長に伴う心の痛みは、子供だけでなく、親も感じるものでもあるようです。

 父親のいない花たち家族において、「父性」を感じさせるのは、近くに暮らす韮崎のおじいちゃん(CV:菅原文太)でした。農業を営む韮崎家のサポートがなければ、花たち一家は山里に定着することは難しかったでしょう。ご自身も山梨で農業生活を送っていた菅原さんは2014年に81歳で亡くなり、『おおかみこども』が菅原さんの遺作となっています。

 次週放送の『バケモノの子』では「父性」が物語の重要なモチーフとなっており、「理想の母親像」を描いた『おおかみこども』と続けて観ることで、親の存在について改めて考える機会になるのではないでしょうか。次々週放送の『サマーウォーズ』は、細田監督が結婚前に、奥さまのご実家にあいさつに行った体験が企画のきっかけだったそうです。細田監督がこれからどんな家族像、コミュニティーの在り方を描いていくのかも、注目したいと思います。

(長野辰次)

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