【シャーマンキング30周年への情熱(38)】千年前の麻倉の祖先、麻倉葉王の謎に迫る
「超・占事略決」と2体の式神の由来は?

次に、「泰山府君の祭」についてです。泰山府君とは中国五大霊山のひとつ・泰山の神で、道教的にも特別な意味を持つ存在です。冥界(死者の世界)を司る神なので、役割が同じ仏教の閻魔(えんま)と同一視され日本に伝わりました。
祭事の内容は、この神に頼んで寿命を操作したり死者を蘇らせたりするもので、安倍晴明が始めたとされています。ただ麻倉葉王は安倍晴明と同時代を生きた陰陽師なので、実は晴明の陰に葉王の影響があったかもしれません。
そして「超・占事略決」。もともと「占事略決」というものがあり、これは安倍晴明が記した書物です(ここでも晴明の名が!)。占術の基本的な説明と具体的な使い方が簡単に記されています。「略して定めたもの」だから「略決」です。
それと同じ名前を持ち、「占いのことが簡単に書かれている」はずなのに、中身は葉王の使った秘術の全て……となると、「超」占事略決の「超」は「裏側・異説」の意味で考えるのがよさそうです。ただ、現在のところ内容は不明です。ただひとつ「降魔調伏(こうまちょうぶく)」について書かれていたことは、アンナのセリフから判明しています。
最後に、超・占事略決と一緒に封印されていた葉王の式神、「前鬼・後鬼」についても触れておきましょう。
「ぜんき・ごき」と呼ばれ、もとは飛鳥時代の呪術者で、修験道の開祖でもある役小角(えんのおずの)の弟子夫婦とされています。後鬼が妻です。修験道といえば、葉の父・麻倉幹久は修験者ですね。
とはいえ、葉王が生きた時代から300年は昔の話なので関連はよくわかりません。ただ一説では、前鬼・後鬼は役小角の式神だったとも言われているので、葉王は何らかの方法でそれを手に入れたのかもしれません。
いずれにしろそれが動ける状態で封印されていることから、平安の当時、葉王を倒した者たちもすでに葉王が不死だと理解せざるを得なかったでしょう。総合的に見れば、目の前で倒した葉王は一時的に魂が肉体から離れただけで、また蘇ることが明らかです。その大きな絶望感と使命感が代々語り継がれ、葉明の孫の時代に現実となった……アニメ1話冒頭での葉明の苦悩が、より強くわかるというものです。
……と同時に、それをあっさり倒してしまったアンナの能力にも驚かされます。
このように見ていくと、ハオが麻倉葉王だった時代から、もはや無敵といえるほどの存在だったことがみなさんも実感できたのではないでしょうか? 今では「スピリット・オブ・ファイア」まで手に入れ、当時よりもさらに強くなったであろうハオに葉たちがどう立ち向かっていくのか、今後も目が離せないことになりそうです。
それでは今回はこの辺で。また次回よろしくお願いします!
(タシロハヤト)
(C)武井宏之・講談社/SHAMAN KING Project.・テレビ東京