意外と知らない?ファミコン周辺機器3選 「手袋みたいなコントローラー」「ワイヤレス接続に感動」
2021年7月15日で生誕38周年を迎える「ファミリーコンピュータ」。家庭用ゲーム市場の黎明期を支え、爆発的な人気を獲得したファミコンの傍らには、バラエティ豊富な色とりどりの周辺機器が顔をそろえていました。
ファミコン全盛期を彩った懐かしの周辺機器
ボタン連打の多いタイトルで重宝する連射コントローラー(いわゆる連コン)や、『ファミリートレーナー』でお世話になったマットコントローラー、さらには専用ソフトと合わせて使うロボット……などなど、家庭用ゲーム機「ファミリーコンピュータ」(以下、ファミコン)の傍らでは、実にさまざまな周辺機器が産声を上げました。この記事では、ファミコン向けに発売された周辺機器のなかでも特徴的なラインナップを3つご紹介。製品の仕様や当時の使い方を振り返ります。
●パワーグローブ(PAX)
最初にご紹介するのは、1990年にPAX(海外ではマテル社)より発売された「パワーグローブ」。両手で持つタイプのコントローラーではなく、腕に装着して使用するユニークな一品です。
デザインをひと言で表現するなら”コントローラー付き手袋”。グレー&ブラックのツートンカラーがスタイリッシュに映えるグローブ部分に、十字キーおよび各種ボタン付きの操作パネル(コントローラーにあたる部分)があらかじめセット済み。本体付属の専用センサーをブラウン管テレビの上に設置し、ユーザーは腕にグローブをはめてゲーム(未対応ソフトを除くファミコン用ソフト)をプレイする……というイメージです。パワーグローブ装着中は”腕の上げ下げ”や”指の曲げ具合”によってゲーム内キャラクターを操ることができ、グローブの操作パネルのボタンを押さずともゲームを進めることができました。
とは言うものの、気になる操作性はお世辞にも快適とは言えないレベル。客観的な感想だけでなく、本体付属の説明書にも「操作性が大変微妙」と記載されているほどです。その説明通り、グローブを装着しているとどうしても腕に負担が加わるほか、繊細な操作が要求されるゲームでは一定以上の慣れが必要でした。
とりわけ「スーパーマリオブラザーズ」シリーズのようなアクションゲームの場合、思った通りにマリオを動かせず、立て続けに凡ミスしてしまう……なんてことも。ちなみに海外ではパワーグローブ専用ソフトが数種類ほどリリースされましたが、残念ながら国内で売り出されることはなかった模様。もし日本でもパワーグローブの使用を想定した専用ソフトが発売されていれば、多少は評価が変わっていたかもしれません。
●JOY RADER(HAL研究所)
「星のカービィ」シリーズを生み出した桜井政博さんや、任天堂の代表取締役社長を務めた故・岩田聡さんが在籍していたことでも知られるHAL研究所(以下、HAL研)。そんなHAL研が1986年8月に発売したのが「JOY RADER」(以下、ジョイレーダー)。ファミコン本体に取り付ける周辺機器ですが、特定のソフトに用いるわけではなく、”映像の出力装置”として運用しました。
2021年現在の家庭用ゲーム機のようにHDMIケーブルをモニター側のHDMI端子へ接続……というわけにもいかず、当時のファミコンはRFスイッチを介し、ひと手間を加えてブラウン管テレビと接続する必要がありました。1回のプレイごとにファミコンを片付けるなら、当然そのたびに手間のかかる配線作業が待っていたわけです。
その煩わしさを解消したのがジョイレーダー。ファミコン本体に取り付けることで、テレビ(要UHF)とのワイヤレス通信が可能になり、同時にコードレスでゲームプレイが楽しめるようになりました。同じくファミコン向け周辺機器として、後年に「ジョイレーダーmk2」も発売されたようです。
●スタディボックス(福武書店/現:ベネッセコーポレーション)
最後に取り上げるのは「スタディボックス」。1986年4月から「進研ゼミ小学講座」の会員向けにサービス提供が始まり、学習教材のひとつとして扱われていました。使用方法は「ファミコンに取り付けたスタディボックスへ専用のカセットテープをセットする」というもの。スタディボックスの仕組み自体は「ディスクシステム」に近く、カセットテープがファミコンソフトの役割を担っています。
各種テープは受講中のコース(サイエンス/イングリッシュ)に従い、起動後の内容でしっかり差別化されていたのが特徴。合計ラインナップは100種類近くに上り、学習教材ではないゲームソフトが送られてくる場合もありました。
しかしゲーム内容以上に衝撃的だったのが、プレイ中に耳に入るサウンド。いわゆる”ピコピコ音”ではなく、ファミコン用ソフトとは思えないほどに美麗。声優陣が声を吹き込んだゲーム内キャラクターの音声もクリアに再生することができたのです。通常のROMカセットではなかなかできない、カセットテープを用いたスタディボックスだからこそ可能だった芸当と言えるかもしれません。
その後、スタディボックスを提供していた福武書店はその後ベネッセコーポレーションへと社名を変更。ファミコン用ソフトのみならず、教育目的の電子玩具をはじめ、家庭用ゲーム機(携帯型ゲーム機)でも数多くの学習用ソフトを開発・発売しています。
今回ご紹介した3つの製品はもちろん、ファミコンにはまだまだ用途の異なる魅力的な周辺機器がたくさん存在します。ファミコン生誕38周年を迎えたばかりの今だからこそ、リアルタイム世代の方は実家に眠っているソフトや周辺機器に思いをはせてみるのも良いのではないでしょうか。
(龍田優貴)