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僕らは「京アニ」作品を待ち続ける。『小林さん家のメイドラゴン S』でTVアニメに復帰

2019年7月18日、京都アニメーションを襲った悲惨な事件から2年が経ちました。世界最高峰の人材を理不尽な形で失っただけでなく、積み上げてきた貴重な原画や資料も失われましたが、『劇場版 ヴァイオレット・エヴァ―ガーデン』で底力を見せつけ、2021年7月放送の『小林さん家のメイドラゴン S』でついにTVアニメへの復帰を果たしました。

絵コンテのクレジットに受けた衝撃

アニメ『小林さん家のメイドラゴン S』キービジュアル。2021年7月7日よりABCテレビ、TOKYO MXなどで毎週水曜24:00~放送中
アニメ『小林さん家のメイドラゴン S』キービジュアル。2021年7月7日よりABCテレビ、TOKYO MXなどで毎週水曜24:00~放送中

 2021年7月7日からスタートしたTVアニメ『小林さん家のメイドラゴンS』の1話を見ていたとき、エンディングテロップの絵コンテにクレジットされていた「武本 康弘」の名前を見て目を疑いました。

 故・武本康弘氏は、2年前の理不尽極まりない事件の犠牲となった、京都アニメーションのメンバーのひとりです。1992年に入社した武本氏は順調に経歴を積み重ねると、2003年の『フルメタル・パニック?ふもっふ』で監督デビューを果たし、2007年の『らき☆すた』、2009年の『涼宮ハルヒの憂鬱』、2012年の『氷菓』、2014年の『甘城ブリリアントパーク』など数々の名作を世に送り出しています。絵コンテや演出としても膨大な数の作品に参加していた、京都アニメーションの中核を担う方でした。

 2017年に放送された『小林さんちのメイドラゴン』でも監督・脚本・絵コンテを務めており、まだまだこれからも多くの作品で多くの人を楽しませてくれるはずでした。

『小林さんちのメイドラゴン S』の放送前、武本氏の名前がシリーズ監督としてクレジットされることは公表されていました。武本氏の残した財産はこの作品にまだ生きている、というような意味合いでクレジットされることになったのだろう……筆者は浅はかにもそう思い込んでいたのです。

 絵コンテとは、アニメ作品の制作前に用意される、映像のイメージを具現化するためのイラストによる設計図で、スタッフ内でのイメージ共有に使われているものです。

 今回、絵コンテとしてクレジットされていたのは武本氏と本作で監督を務める石原立也氏のおふたりです。作品のどの部分に武本氏が残した絵コンテが使われたのかはわかりません。もしかするとごくわずかな割合なのかも知れませんが、それでもあの日に失われたはずの足跡にまだ続きがあったことに、強く感情を揺さぶられることとなりました。

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