衝撃的だった『ペーパーマリオRPG』 かわいい「ビビアン」にド肝を抜かれる
2021年7月22日は、ゲームキューブ用ソフト『ペーパーマリオRPG』の18回目の誕生日です。前作『マリオストーリー』を踏襲しつつも、ゲームシステムが大幅にパワーアップ。シリアス風味のストーリーに加え、マリオの仲間に加わるキャラクター「ビビアン」が当時のプレイヤーにある種のインパクトを与えました。
まるで絵本のキャラクター ペラペラになったマリオが大冒険
タヌキにカエル、地蔵やペンギン……などなど、シリーズを追うごとにさまざまな姿へと変身を遂げたマリオ。そのなかでも、全身がペラペラになったマリオを読者の方々はご存知でしょうか。
その名も「ペーパーマリオ」。名前の通り、3次元ではなく2次元的な見た目が特徴的なマリオです。今回は彼が大々的にフィーチャーされた「スーパーマリオ」シリーズの一作、『ペーパーマリオRPG』を振り返ります。
そもそも「ペーパーマリオ」とは、2000年8月に送り出されたNINTENDO64用ソフト『マリオストーリー』に端を発するシリーズです。2021年7月時点では最新作『ペーパーマリオ オリガミキング』を含めて合計6タイトルがラインナップされており、”紙を切り抜いて作ったようなキャラクター”が共通して登場。『スーパーマリオ64』や『スーパーマリオ オデッセイ』に代表される、箱庭型フィールドを歩き回る3Dアクションゲームとは異なったシステムが採用されています。なお、タイトル名にRPGとついていますが、スーパーファミコン用ソフト『スーパーマリオRPG』とのつながりは描かれていません。
今回ご紹介するゲームキューブ用ソフト『ペーパーマリオRPG』は、2003年7月22日に「ペーパーマリオ」シリーズの2作目として誕生。ストーリーの構造や基本的なゲームシステムを踏襲しつつも、前作以上に”紙らしさ”がアップ。「数cmにも満たない隙間を通り抜ける」、「身体を折りたたんで紙飛行機や紙ボートになる」という風に、アクション面でも大胆な進化を遂げていました。
一方、戦闘システムにも前作にはない新たな試みが。「ハンマーで殴る・ジャンプで踏みつける」といったコマンドを選んでダメージを与える流れを引き継ぎつつ、本作は新たに”舞台システム”を実装。「マリオと敵が戦っている光景を観客が見物する」という設定が用いられ、舞台上の仕掛けや観客のリアクションに応じて戦況が大胆に変化したのです。
頭上に落下した照明に頭をぶつけるマリオ、観客からアイテムの施しを受けてやる気を出すマリオ、かと思えば観客から石ころを投げられて痛手を負うマリオ……。ステージの最奥部に構えるボスとの戦闘はもちろん、何気ないザコ敵との戦闘でもマリオと仲間たちが色々な表情を見せてくれました。
ビビアンの正体に驚愕 18年経っても色褪せない魅力
全体的にパワーアップを遂げた『ペーパーマリオRPG』ですが、ストーリー部分の装いも異彩を放っています。冒険の拠点となる街「ゴロツキタウン」は名前通りに治安が悪く、街中ではふたつの勢力が”抗争”を繰り広げ、住人のキノピオは「他人の喧嘩に関わると命が足りない」とマリオに対して助言。さらに街中を見ると、その証言を裏付けるように物騒な絞首台がそびえ立っており、意気揚々とゲームを始めたプレイヤーに一種の不安を与えます。
こうしたシリアスさはゴロツキタウンの雰囲気だけでなく、「スターストーン」(重要アイテム)を巡る道中においてより色濃くなっていきました。格闘技イベントに挑む最中でとある失踪事件に遭遇する「ウーロン街」。正体不明のモンスターに翻弄され、マリオのアイデンティティが大きく揺らぐ「ウスグラ村」。序盤で訪れるふたつの舞台は本作のみならず、「ペーパーマリオ」シリーズに置いてもひときわ異彩を放っていると言って良いでしょう。
筆者が個人的に印象深いのは、メインキャラクター「ビビアン」との一幕。当初はマリオと敵対関係にあったものの、ウスグラ村での騒動をきっかけにマリオと和解。影に隠れてトラップや敵をやり過ごす能力を使い、マリオ一行の冒険を頼もしくサポートしてくれます。見た目は赤白ボーダーの三角帽子をかぶったかわいらしい女の子。マリオを心の底から慕っており、エンディングでは胸中の好意を伝えようと頑張る健気さも秘めています。
……ここまで書けば、「ピーチ姫に次ぐヒロイン気質」と思えるかもしれませんが、彼女、もとい”彼”は女性ではなく、れっきとした男性なのです。
こちらは二次創作でファンが考案したキャラ付けとは違い、任天堂が定めた公式設定。実際に「スーパーマリオ」シリーズを題材としたマンガ作品『スーパーマリオくん』(沢田ユキオ/小学館)でも、ビビアンは”男性である”という描写があります(マリオがビビアンの無精ヒゲに驚く)。いずれにしても、「キュートな魔女っ子が実は男の子だった」という事実に衝撃を受けたプレイヤーは相当数いたように思われます(筆者もいまだに錯覚を覚えています)。ちなみに海外で発売された『ペーパーマリオRPG』では、一部の地域版のみ、ビビアンの性別が女性へと変更されたようです。
発売から18年を迎えてなお色褪せない『ペーパーマリオRPG』。現在はゲームキューブを用意するほかにプレイ手段がないため、『スーパーマリオ 3Dコレクション』(Nintendo Switch/2020年)のように何らかの形でリマスター化される機会があることを願ってやみません。
(龍田優貴)