追悼 声優・鈴置洋孝さんが演じた二枚目たち 「日本の二大フッ声優」とは?
二枚目からダンディへ演技の幅を広げる

一風変わった鈴置さんのキャラといえば、『戦え!超ロボット生命体トランスフォーマー』(1985~1986年)のスタースクリームの存在が忘れられません。リーダーの座を習うNo.2の野心家ですが、いつもうまくいかず最後には許しを請うというキャラです。
実は原典の米国版では甲高い声で小ずるいイメージの強いキャラでしたが、日本版では鈴置さんの演技で二枚目だけどヘタレという感じのキャラに仕上がっていました。ちなみに鈴置さんは他のキャラも何人か演じていて、パワーグライドではだいぶ声を作って演じています。
この時期の鈴置さんの当たり役ですと、『聖闘士星矢』(1986~1989年)のドラゴン紫龍を皆さんも思い出されることでしょう。本作の原作者である車田正美先生というと、マンガのなかで「フッ」というセリフが多いことで有名ですが、鈴置さんは声優ファンからは「フッ」と鼻で笑う演技の達人として、「日本の二大フッ声優」と呼ばれていたそうです。ちなみにもうひとりは牡羊座のムウを演じ、やはりお亡くなりになった塩沢兼人さんでした。
同時期に『ドラゴンボール』(1986~1989年)の天津飯も演じていて、両方の番組で『機動戦士ガンダム』で一緒だった古谷徹さんと共演しています。「ジャンプ」アニメの多い時代でしたから、他にも『北斗の拳2』(1987~1988年)のシャチ、『魁!!男塾』(1988年)の伊達臣人、『るろうに剣心 -明治剣客浪漫譚-』(1996~1998年)の斎藤一など、他の作品でも存在感の強いキャラを演じていました。
二枚目役の多い鈴置さんですが、たまに見せるギャグ調の演技も素晴らしかったです。例えば『超力ロボ ガラット』(1984年)のカミル・カシミールJr.や、『らんま1/2』(1989~1992年)の九能帯刀のように二枚目なんだけど壊れた演技でギャップがあるキャラも抜群の魅力がありました。
また、渋くダンディなリーダーキャラも多かったです。『機動警察パトレイバー』(1989年)の内海、『天空戦記シュラト』(1989年)の雷帝インドラ、『宇宙の騎士テッカマンブレード』(1992年)のハインリッヒ・フォン・フリーマン、『ポケットモンスター』(1997~2002年)のサカキなど、ご存命ならもっと多くのダンディなキャラを演じてくれたことでしょう。
新しいお声は聞くことができませんが、ゲーム「スーパーロボット大戦」シリーズなどでは、現在でも生前に収録していた破嵐万丈や北条真吾の声を聞くことができます。そしてリアルタイムで鈴置さんの声を聞いたことのない人にも、その声の印象を強く残していました。
こうして鈴置さんの残した仕事の数々は、確実に次の世代にも語られていくのでしょう。筆者も語り部として、これからも鈴置さんのことを後の世にも伝えていこうと思います。
(加々美利治)