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レジェンド脚本家・辻真先氏が語る、国民的アニメの「第1話」たち

安彦良和さんの依頼を受けて書いた『巨神(ジャイアント)ゴーグ』

――現在もなお、TVアニメのシナリオに携わっている辻先生ですが、シリーズ全体を俯瞰することができた最後の作品として『巨神ゴーグ』(1984年)のタイトルを挙げられています。

辻 安彦良和さんから脚本の依頼を受けた時は驚きました。新しくロボットものを始めるという話でしたが、制作会社のサンライズには『機動戦士ガンダム』(1979年)や『装甲騎兵ボトムズ』(1983年)などの人気作品がすでにありました。

「『ガンダム』や『ボトムズ』とかぶるのではないか」と安彦さんに聞いたら、「かぶりません。原作は僕だから」という答えが返って来ました。心強い一言に、僕は喜んで引き受けています。

 いざ安彦さんの原作を見せてもらうと、大型のメモ帳にイラスト混じりの覚書が書かれていました。舞台になるのは、南海の孤島オウストラル──。それなのに、安彦さんの「第1話」原作はニューヨークの真っただなかで開幕するというのです。

 今回『辻 真先のテレビアニメ道』には、『巨神ゴーグ』第1話「ニューヨーク・サスペンス」のシナリオを収録しているので、僕がどんな話を書いたのか、ぜひご覧になってみて下さい。

『巨神ゴーグ』は題名にロボットの名をうたっていますが、ロボットはなかなか登場しません。玩具を売り出すスポンサーは、「第4話」でようやく姿を現した巨神に装備らしいものが見当たらないので、戸惑ったに違いありません。「こりゃあ原作者は確信犯だぞ」そう推理して、僕も腹をくくって書きました。

――最後に、読者へのメッセージをお願いします。

辻 『辻 真先のテレビアニメ道』執筆にあたり、改めて自分が手掛けたアニメを振り返ってみると、実に多くのジャンルに挑戦してきたなと、感慨深いものがありました。

 TVアニメは、作り手も、受け手も、同時に芽吹いた新しい文化で、双方向で互いの質を高めあってきました。何もなかった荒野に切り拓かれて来たTVアニメの道。アニメを作る人と見る人のそれぞれが、これからも守り育ててもらえればと思います。

(メモリーバンク)

※文中一部敬称略
(C) 辻 真先

●『辻 真先のテレビアニメ道』(立東舎)は、2021年8月26日(木)より全国発売予定。A5正寸、320ページ、本体2200円+税

【画像】TVアニメの知られざる歴史も…『辻 真先のテレビアニメ道』

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