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悲運の「かませ犬」ヤムチャ 今だから分かる、「楽」の文字に込められた思い

シリーズ初期からメインキャラとして活躍していたヤムチャ。しかし、敵が強大になっていったことで、いつしか戦力外の烙印を押されてしまうことになります。そんなヤムチャですが、彼にしかない良いところがいくつもありました。

強かったからこそ「かませ犬」だったヤムチャ

(画像:写真AC)
(画像:写真AC)

 ヤムチャが『ドラゴンボール』に初登場したのは原作マンガでは7話、アニメでは5話の初期話数で、最初はドラゴンボールを狙う盗賊としての登場です。とはいえ、悪人というほど非道なイメージは薄く、どちらかというと孫悟空のライバル的な存在でした。当初のモチーフは『西遊記』の沙悟浄でしたから、猪八戒役のウーロンのように後から仲間になることが前提のキャラだったのではないでしょうか。

 この時のヤムチャは、征服欲のようなものはなく、金品に関しても奪えばいいと言ってました。しかし、盗賊稼業も街に行くなど、もっと効率のいい方法があるわけで、指名手配もされていないことから、大きな悪事は働いていない感じがします。あくまでも「ちょい悪」程度だったのかもしれません。

 この頃のヤムチャは空腹時の悟空を圧倒できるくらいの実力もあったので、初期の本作では紛れもなくNo.2の実力者でした。たびたびファンから最強キャラの一角に挙げられる兎人参化との戦いでは、ニンジンになったブルマを救出して、悟空を助けるという功績も果たしています。もしも、最初のドラゴンボール探しで物語が終わっていれば、その後にあったヤムチャへのマイナス評価はなかったことでしょう。そう考えると本作の長期化でもっとも被害を被った人物はヤムチャということになります。

 ヤムチャの願いは「女性に対して緊張しなくなる」こと、それがブルマと行動を共にするようになったことから自動的に克服され、悪事から完全に足を洗いました。そこからブルマとの恋人生活が始まり、亀仙流の修行では、かめはめ波もクリリンより先に習得しています。こう見ると、この時点ではヤムチャの方がクリリンより実力は上だったかもしれません。アニメではクリリンを殺したタンバリンと負傷癒えぬ状態で互角だったことから、少なくともそう考えていた人は少なくなかったでしょう。

 しかし、この時点でもヤムチャは「かませ犬」という扱いでした。天下一武道会では、すべて一回戦で敗退しているからです。もっとも、そのなかのジャッキー・チュンと天津飯は優勝、シェンは地球の神様だったので仕方ありません。かませ犬という引き立て役も、一定の実力がなければ成立しないもの。後にライバルとなった天津飯、ピッコロ、ベジータも悟空と戦うラスボスの前座という役割を果たしています。

 つまりかませ犬は仲間のなかでも強い証だったわけですが、ヤムチャの悲運はその後に見せ場が用意されなかったことでしょう。つまり、負けたまま活躍もなく終わったことにあります。

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