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楳図かずおの恐怖マンガ集『こわい本』 美少女が【蛇女】に変貌する不条理さ

人気マンガ家・楳図かずお先生が若い頃に描いた「恐怖マンガ」をセレクトした『こわい本』が現在、全国の書店で販売中です。『こわい本1・蛇』には、『うろこの顔』『蛇娘と白髪魔』『口が耳までさける時』の3作品が収録されています。かわいらしい美少女たちが想像を絶する恐怖に巻き込まれていく展開から、目が離せなくなります。

角川ホラー文庫で、初期の名作を復刻

『うろこの顔』『蛇娘と白髪魔』などを収録した、『こわい本1・蛇』(画像:KADOKAWA)
『うろこの顔』『蛇娘と白髪魔』などを収録した、『こわい本1・蛇』(画像:KADOKAWA)

 人気マンガ家・楳図かずお先生が、『14歳』の連載終了以来となる26年ぶりの新作マンガを発表することが話題となっています。制作に4年の歳月を費やし、「マンガの奥意を極めた巨匠 楳図かずおの新境地」となる作品だそうですが、発表されるのは2022年1月になります。来年が待ち遠しい。そんなファンにおすすめのシリーズが、書店にて現在発売中です。

 角川ホラー文庫では、2021年6月から楳図先生の傑作恐怖マンガをセレクトした「こわい本」シリーズの再編集版が刊行されています。『こわい本1・蛇』『こわい本2・異形』『こわい本3・狂乱』がすでに発売されており、読者が手にするのを静かに待っています。

 不朽の名作『漂流教室』やSF大河ストーリー『わたしは真悟』『14歳』などの長編マンガが国際的に評価されている楳図先生ですが、初期の短編マンガで見せた恐怖演出も卓越したものを感じさせます。今回は、楳図ワールドの恐怖の原点「へび女」ものを収録した、『こわい本1・蛇』をご紹介します。

「恐怖マンガ」と名付けられた、初めての作品

 楳図ファンにとってうれしいのは、『こわい本1・蛇』は楳図先生の初期作品『口が耳までさける時』が手軽に読めることでしょう。タイトルを読むだけでゾッとする『口が耳までさける時』は、1961年に発表された作品です。この頃の楳図先生は25歳。まだ東京には上京しておらず、自然豊かな奈良県五條市の実家で暮らしていました。

 この作品は、楳図先生自身が「恐怖マンガ」と名付けた、初めての作品です。楳図先生の名前を一躍有名にする『ママがこわい』『まだらの少女』『へび少女』(1965年~1966年)といった一連の「へび女」シリーズの原型となった短編です。

 貧しい家庭に生まれた美少女・さくらは、広い屋敷にもらわれることになります。養母となる女性は、とても美しい人です。ところがさくらの手を握ると、表情が変わります。

「仲よくしましょうね……。おや! それになんてやわらかい手……」

 次の瞬間、女性の首が「ヌ~ッ」と伸びているではありませんか。しかも、よだれまで垂らしています。

 美少女×広い屋敷は、ホラーものの鉄板要素です。さらに子供を守ってくれるはずの保護者が、実は恐ろしいモンスターだった……という読者の心理を根底から揺さぶる設定となっています。子供がいちばん安心できる存在である「母親」が、もしも自分を襲ってきたら……? 名作ホラー『洗礼』や、楳図先生が映画監督デビューを果たした片岡愛之助さん主演作『マザー』(2014年)など、楳図作品ではこの究極ともいえる恐怖モチーフが繰り返し描かれることになります。

【画像】『こわい本』は全10冊、2022年にかけて順次刊行予定(4枚)

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