昭和のファンが「最近のウルトラマン」で許せない3つのこと 紐解くと見えてくる魅力も?
「平成ウルトラマン」も今では懐かしいと思える時代に突入しましたが、ウルトラファンのなかには初期ウルトラシリーズと比較して今のウルトラ戦士たちの進化に違和感を覚えている人も少なからずいるようです。そんな人たちがつい「最近のウルトラマンは……」と思ってしまうポイントとは……?
初期ウルトラファンにこそ観て欲しい! 今の製作陣たちが守り抜いていること
平成ウルトラマンが誕生してからすでに四半世紀が経過し、令和の最新作『ウルトラマントリガーNEW GENERATION TIGA』が注目を集めています。平成ウルトラマンもまた懐かしいものになりつつある一方で、ウルトラサブスクことTSUBURAYA IMAGINATIONの配信サービスを背景に、昭和ウルトラシリーズも再び脚光を浴びています。
さて、さまざまな時代のウルトラシリーズが楽しめる現在ですが、今なお平成以降のウルトラシリーズに抵抗を感じている人も少なからずいるようです。いったい、昭和と平成以降のウルトラマンは、何がどう違うというのでしょうか。
よく聞かれる「最近のウルトラマンは……」といった保守寄りの声に耳を傾けると、実はウルトラシリーズの変わらぬ魅力が見えてくるのです。
●「最近のウルトラマンは…とにかく武器が多いなあ」
最近のウルトラマンの武器のバリエーションには驚かされます。初代ウルトラマンはステゴロ(素手)でしたし、ウルトラセブンのアイスラッガーはきわめてシンプルです。また「帰ってきたウルトラマン」(ウルトラマンジャック)のウルトラブレスレットは色々と変形しますが、デザイン自体は簡素なものでした。
では最近のウルトラマンはというと……『ウルトラマンX』は歴代怪獣のアーマーを身につけド派手に武装。『ウルトラマンZ』でも、べリアルの頭部がついた“しゃべる武器”が登場。『ウルトラマントリガー』のGUTSスパークレンスは変身アイテムでありながら、銃でもあります。
近年のウルトラマンは確かに武器が多いかもしれませんが、何も怪獣プロレスだけがウルトラシリーズの魅力ではありません。それにバリエーションでいえば、戦いのなかで水入りバケツまで出した「ウルトラマンタロウ」も負けず劣らずといえるでしょう。
また武器玩具の売上はウルトラシリーズの存続に大いに関わるところですし、平成ウルトラシリーズを数多く手がけた田口清隆監督をはじめ、戦闘の魅せ方を追求し続ける今の製作陣にかかれば、こうした武器も物語の起爆剤になるなど、積極的な役割を果たしているととらえることもできます。
●「でもやっぱり…赤と銀じゃないとなあ」
平成ウルトラシリーズの始まりとなる『ウルトラマンティガ』から25年経過してもなお「やっぱりウルトラ戦士は赤と銀じゃないと…」と昔を懐かしむ声があるのも事実です。とはいえ(無意味な比較になりますが)平成仮面ライダーのデザインにおけるダイナミズムを鑑みれば、むしろウルトラシリーズは比較的基礎を踏襲している方といえます。
ウルトラセブンの体色はもともと青の予定で、公式自体が最初から「赤」にこだわっているわけではないということや、銀色と金色がメインカラーのウルトラマンキングなどを考慮に入れれば、現在のウルトラマンのデザインもありのままに楽しめるかもしれません。
●「それにしたってCGを多用するのはちょっと…」
ウルトラシリーズに限らず、特撮へのCGの採用は議論されてきました。CGも広義の特撮ではあるのですが、なぜか「手間がかからないもの」ととらえられてきました。そう思われてしまったのは、導入当初のCGの「質感」が原因だったかもしれません。
黎明期はどうしてもCG特有のヌメりが拭えず、画面上でのリアリティにムラが生じてしまっていました。とはいえ、そんな中でも“板野サーカス”に代表されるような空中戦など、特撮の演出の可能性を拡げてくれたこともまた事実でしょう。
当時、違和感を覚えていた人にこそ観ていただきたいのが、現在放送中の『ウルトラマントリガー』です。倒壊するビルひとつとってもそれがCGなのかはたまたミニチュアなのか判断し難いリアリティ……求めていた迫力が見事に表現されています。
ウルトラシリーズは時代に合わせて多様な変化を遂げてきましたが、初代ウルトラマンからトリガーまで共通しているのは「大人の鑑賞に耐えうる脚本」でしょう。この点だけは変わることはありません。
常に「正義とは何か」と葛藤し続けるヒーローの姿。「攻撃」と「平和」の板挟みのなか戦い続ける防衛チーム。決して「勧善懲悪」では終わらないドラマ。それが55年もの間、連綿と受け継がれている“われらのウルトラマン”なのです。
(片野)
(C)円谷プロ (C)ウルトラマントリガー製作委員会・テレビ東京