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『鬼滅の刃』特別編第4夜「那田蜘蛛山編」 走馬灯は「死亡フラグ」ではない?

死亡フラグではない「走馬灯現象」

『鬼滅の刃』Blu-ray/DVD Vol.10 (C)吾峠呼世晴/集英社・アニプレックス・ufotable
『鬼滅の刃』Blu-ray/DVD Vol.10 (C)吾峠呼世晴/集英社・アニプレックス・ufotable

「あぁ、それは走馬灯ですね」

 水柱・冨岡義勇とともに那田蜘蛛山に駆けつけた蟲柱・胡蝶しのぶが、善逸に向かって語るセリフです。善逸も記憶のなかのじいちゃんに励まされ、なんとかサバイバルしたのでした。

 医学に詳しいしのぶは、「一説によると死の直前に人が走馬灯を見る理由は、今までの経験や記憶の中から、迫りくる死を回避する術を探しているんだそうですよ」と「走馬灯現象」を説明します。

 しのぶの解説が正しいかどうかは現代の医学でも判断しかねますが、これまで「死亡フラグ」として描かれることの多かった「パノラマ記憶」とも呼ばれる「走馬灯現象」のことを、ギリギリの状況下でも生き抜くために備わっている未知の身体機能として捉えているところが、『鬼滅の刃』の面白さではないでしょうか。

 本当の家族とは何か。呼吸を整えることの大切さ。追い詰められた人間が発揮する潜在能力のすごさ。とても身近なものだけど、現代人が忘れがちな大切なテーマの数々が、那田蜘蛛山の深い森には隠されています。

善逸を支えたじいちゃんの助言

 それまで怖いもの知らずだった伊之助も重傷を負い、死の恐怖を初めて味わうことになります。暗い森のなかで正体不明の敵と集団戦を繰り広げる様子は、若き日のアーノルド・シュワルツェネッガーが主演したSF映画『プレデター』(1987年)を思わせるものがあります。胡蝶しのぶの仕込み靴は、『007/ロシアより愛をこめて』(1963年)のアレンジでしょうか。

 鬼に投げ飛ばされた炭治郎は「水の呼吸」を使って、うまく着地に成功します。このシーンは、先日亡くなられた千葉真一さん主演のアクション映画『激突!殺人拳』(1974年)を彷彿させます。千葉さん演じる主人公・剣琢磨は、独自の呼吸法をすることで高所から落とされた衝撃を緩和させます。原作者の吾峠呼世晴氏は、洋画邦画を問わず、かなりの映画に精通していることを感じさせます。

 最後に、善逸を支えたじいちゃんの言葉「ひとつのことを極め抜け」も触れたいと思います。自分に自信が持てず、そんな自分自身が嫌いな善逸でしたが、じいちゃんの「ひとつのことを極め抜け」「お前は必ず報われる」という教えに従い、「雷の呼吸」の壱ノ型「霹靂一閃」だけを徹底的に練習し、体に覚え込ませています。無意識のうちに体が動くほどになっています。

 武術に限らず、人間は何かひとつだけでも自信が持てるものがあれば、世界は異なって見えてくるのではないでしょうか。他の人から笑われても、ひとつのことを極めることで、道は開けていくようです。

 どんなに厳しい状況下でも、生きることを決して諦めなければ、希望は必ず見えてくる。明けない夜はありません。それは『鬼滅の刃』全体を通した、原作者から現代社会を生きる若者たちに向けた熱いメッセージではないでしょうか。

※禰豆子の「禰」は「ネ」+「爾」が正しい表記

(長野辰次)

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