“人を選ぶ”名作『女神異聞録ペルソナ』 25年経っても色褪せないジュブナイルRPGの原点
1996年9月20日、「ペルソナ」シリーズの第1作目『女神異聞録ペルソナ』が発売されました。「女神転生」シリーズの派生タイトルとして生まれた本作は、メインキャラクターのほとんどがティーンエイジャー。思春期真っ只中の高校生を主役にした上で、各キャラクターが自己と向き合い受け入れていく様子を丹念に描きました。
25周年を迎えた「ペルソナ」シリーズの原点
突然で恐縮ですが、読者の皆さまは「ペルソナ」という概念をご存知でしょうか? カール・グスタフ・ユング(心理学/精神学者)が提唱した学説で、ユング自身は組織や集団内での個々人の役割についてフォーカスしていました。
また、ペルソナとは古代ギリシアの演劇で用いられた仮面に由来するとも言われています。そのほか意味は少し異なるものの、企業等のマーケティング部門で理想の顧客像を割り出すため、ペルソナの考え方を引用する場合もあるようです。
しかし、心理学や西洋史の専門家、はたまたマーケティングのプロフェッショナルでなくとも、ペルソナというフレーズ自体は「それなりに知られているのでは?」と筆者は考えています。その要因を正確に捉えるのは難しいものの、今回ご紹介するPlayStation用ソフト『女神異聞録ペルソナ』が、多くのゲームファンの間で”ペルソナの認知度向上”に一役買ったのは紛れもない事実でしょう。
25年前の9月20日、『女神異聞録ペルソナ』はアトラスが誇る人気ゲーム「女神転生」シリーズの派生作品としてデビューを果たしました。それまでの女神転生(真・女神転生を含む)と言えば、人類の存亡をかけた終末的な世界、Law・Chaos・Neutralといった思想の違いなど描いていましたが、本作では全編にわたって「自己との対面」(詳細は後述)に焦点が当てられたのです。
主人公(プレイヤー)は私立高校・聖エルミン学園に通うごく普通の少年。ある日のこと、校内で流行していた占い遊び「ペルソナ様」を主人公を含む数人のクラスメイトが実践し、内面に宿る神秘的な力(=ペルソナ)を発現させます。彼らは街全体を覆う異常現象に見舞われるなか、突如として身につけた能力を駆使して窮地を脱出。元凶と思われるハイテク企業「S・E・B・E・C」(セベク)の暗躍を食い止めるべく、”ペルソナ使い”として真相に迫っていきます。
物語や舞台だけでなく、作品を支えるゲームシステムも変更が施された本作。代表的なものは、「女神転生」シリーズの仲魔に相当する”ペルソナシステム”です。従来作では敵対する悪魔と交渉し、仲魔としてパーティーに迎え入れていましたが、本作は悪魔から入手したスペルカードを利用する方式へ変更。規定のスペルカードを組み合わせてペルソナを作り出し、キャラクターに降魔させて能力を行使します。
各キャラクターは3体(最大)までペルソナを降魔できるほか、使用ペルソナに応じてステータス面も変動。ゆえにプレイ中はスペルカード集めに奔走しつつ、ペルソナを降魔させるキャラクター選びやペルソナチェンジのタイミングなど、攻略をスムーズに進めるための判断力が常に問われました。