1stガンダムの異色作『ククルス・ドアンの島』映画化の理由 マンガ版の映像化は「勘違い」
『ククルス・ドアンの島』がリメイクされる事情とは?

それでは、「ククルス・ドアンの島」のマンガはなかったのか? というとそうではありません。実は『ORIGIN』の時間線に沿ったマンガ『機動戦士ガンダム THE ORIGIN MSD ククルス・ドアンの島』という作品を、おおのじゅんじ先生が月刊誌「ガンダムエース」2016年8月号から2019年7月号まで連載しています。この時のマンガ用キャラクターデザインはアニメ『ORIGIN』でもキャラクターデザインと作画監督を担当したことぶきつかささんでした。
マンガの内容はテレビ版15話とは直接的な関係はなく、ククルス・ドアンの過去、かつて所属していた隊のメンバーのエピソードが中心になっています。今回の報道では、多くの人がこのマンガのアニメ化だと早合点していました。筆者もそのひとりです。しかし、これについては関係者がTwitterなどで訂正していましたが、あくまでも劇場版はテレビ版15話のリメイク作品になるとのこと。
そこで、この15話の背景について改めて考えてみると、いくつかの仮説が導き出されました。それは『機動戦士ガンダム』における15話の扱いです。実は15話は北米向けテレビシリーズビデオソフトでは未収録。これは富野由悠季監督からの指示だったそうです。詳細は不明ですが、海外の一部では15話は通常見られません。
そこを邪推すると15話のリメイク映画は、新たにストーリーを作って『ガンダム』の歴史をゆがめることなく新作を製作、さらに海外向けとして幻の新作としてセールスを期待できる一石二鳥の劇場版になるということです。そう考えてみると、脱走兵であるククルス・ドアンが戦災孤児を守って戦うというストーリーは、海外で人気のあるドラマパターンと言えるかもしれません。つまり今回の劇場版は海外でのセールスも期待してのことだといえるでしょう。
もちろん、これはあくまでも筆者の想像なので的外れかもしれません。あらかじめご容赦ください。
今後、正式な発表がいくつも段階的にあるでしょうが、筆者としては気になるのは声優陣です。誕生から42年経ち、『ORIGIN』でも何人かの声優が交代になりました。それゆえに『ORIGIN』で続投された声優陣は安泰だと思っています。何しろアムロ・レイは古谷徹さん以外に考えられません。他は、ホワイトベースのクルーはともかく、シャア・アズナブルの出番は原典を考えればないでしょう。
しかし、ククルス・ドアン役だった徳丸完さんは2011年に既に鬼籍に入られております。後任は誰になるのでしょうか? 今回の劇場版の主役と言うべきドアン役が誰になるのか? ……それを想像しながら次の発表を待ちたいと思います。
(加々美利治)