子供たちに愛された仮面ライダー「悪の大幹部」の歩み。時代とともに姿は消えて…?
今から50年前、悪の大幹部たちは仮面ライダーに負けぬ人気を誇っていました。悪の華とも言うべき存在に子供たちも興奮してテレビにかじりついていましたが、時代とともにその姿はいつしか消えていってしまいます。
シリーズに革命をもたらした、悪の大幹部の登場

今日から半世紀前の昭和46年9月25日、『仮面ライダー』第26話「恐怖のあり地獄」が放送されました。このエピソードは、ライダーシリーズ初となる悪の組織の大幹部「ゾル大佐」が初登場した回です。
それまでの『仮面ライダー』はショッカー首領が直接怪人に指令を送り、仮面ライダーと戦うという流れでした。まれに怪人に協力する科学者や幹部がゲストとして登場していましたが、レギュラーとしての登場はありません。
ゾル大佐は自ら作戦を立案し、怪人を指揮する役割をもった初めての大幹部で、その登場によってショッカーという組織の強大さが鮮明に描かれることになります。その存在で「首領→大幹部→怪人→戦闘員」という組織構成を確立し、悪の組織としてのショッカーのヒエラルキーを明らかにしました。
人間の姿をしながらも怪人を従えるゾル大佐はまさに惡の華。ライダーシリーズの人気の一端を担った存在だと言えるでしょう。その最期は怪人「黄金狼男」に変身し、大幹部の正体は強力な怪人だったというフォーマットを確立します。
続いて登場した二代目の大幹部「死神博士」も、怪人を従える威厳を持ったキャラで、演じた天本英世さんの怖すぎる演技もあって印象深い存在となりました。天本さんのスケジュールの都合で途中退場してしまいますが、その正体である「イカデビル」として再登場してライダーを苦しめます。
そして日本支部三代目大幹部が「地獄大使」。そのインパクトあるデザインと、演じていた潮健児さんの怪演で、ライダーシリーズを代表する大幹部と言えるかもしれません。
実は、前任のふたりのコスチュームは東映衣装部のもので、特にデザインしたものではありませんでした。一方、地獄大使は原作者の石森章太郎先生がデザインした「ビッグゼロ」をもとに、役者の顔が見えるようアレンジしたもの。このビッグゼロのデザインは原作マンガ版の最後の敵である「ビッグマシン」に流用されたとも言われています。
この後も、ゲルショッカーを結成した「ブラック将軍」や、デストロン初代大幹部の「ドクトルG」といった、仮面ライダーと並ぶ大幹部たちが次々と生まれます。『仮面ライダーV3』では、この5大幹部が勢ぞろいするという一大イベントがあり、ライダーブームを盛り上げました。後に平成ライダーの時代に役者を変更してこの5人が復活したことからも、他の大幹部と一線を画す存在だったと言えるでしょう。
この人気は製作者側も理解しており、月刊誌からの提案で1か月ごとに子供たちが注目する話題がほしいと言われた際、「キバ男爵」「ツバサ大僧正」といった大幹部の乱発を企画しています。続く「ヨロイ元帥」もその予定でしたが、ライダーマンとの因縁から最終回まで続投することになりました。ヨロイ族の怪人が途中から鎧とは縁のない怪人になっていくのはその名残だそうです。