『DQV』花嫁論争、「フローラ派」の理由 堀井雄二氏もビアンカを選ぶと思っていた
ビアンカを選びたくなる、さまざまな仕掛け

ふたりの花嫁候補に出会うタイミングに大きな差があるのも理由のひとつです。 結婚イベントに至るまでの間、作中にはビアンカへの愛着を沸かせる仕掛けがたくさん用意されています。
まずビアンカは、パッケージにも描かれているキャラクター。主人公とは幼なじみの間柄で、レヌール城でのお化け退治では、冒険を共にするパーティキャラクターとして操作ができます。
いったんは離れ離れになるものの、数年後、父親の看病をする彼女と偶然再会を果たし、再び共に旅をすることになるのですが……。この時、主人公はフローラとの結婚を許可してもらうための試練の真っ最中。 試練はルドマンが用意したモノであり、ここまで主人公とフローラとの交流はあまり描かれません。むしろ、フローラに恋するアンディのエピソードのほうが強調されているようにも感じられます。
プレイヤーの感情移入が追いついていないフローラと、幼い頃から知っているビアンカのどちらかを選ぶ……この選択が『ドラクエV』の結婚イベントなのです。
幼い頃、ビアンカと共に救ったベビーパンサーは時を経てキラーパンサーに成長し、再び仲間になるキーアイテムは「ビアンカのリボン」。主人公、ビアンカ、キラーパンサーの一行はどこか家族のような雰囲気すらかもしています。そのような状況でフローラを選択してしまうことに、後ろめたさを感じてしまうプレイヤーも少なくなかったのではないでしょうか。 世界を救う勇者を求めるほどの人物の決断なのだから、なおのことです。
しかしながら、「パッケージにも描かれているから」「子供の頃から一緒に冒険してきたから」「フローラにはアンディがいるから」と言った、”ビアンカ本人を見ていない”ような選択は、よくよく考えてみると、伴侶を選ぶ決断の理由として逆に不誠実なようにも思えてきます。
2004年にニンテンドーDS用ソフトとして発売されたリメイク版からはもうひとりの花嫁候補「デボラ」も登場します。幼少期の主人公とフローラとのつながりも描かれ、ますます決断が難しくなりました。
今も衰えぬ人気を誇る『ドラクエV』は、現在iOS/Android用のゲームアプリとして配信されています。1周目のプレイとは違うキャラクターを花嫁に選ぶことで、ストーリーをさらに味わい尽くすことができます。 本心ではビアンカ以外を選びたかった方は再度プレイし、全員の花嫁を選択した後に、改めて自分の”花嫁”を考えてみても良いかもしれません。
(ふみくん)