【追悼】さいとう・たかを先生が残した、『ゴルゴ』だけでない偉大な作品たち
『ゴルゴ13』で知られる漫画家のさいとう・たかを先生が、9月24日にすい臓がんで亡くなられました。84歳でした。1955(昭和30)年に貸本マンガ『空気男爵』でデビューしたさいとう先生は、1968年より代表作となる『ゴルゴ13』の連載を開始。2021年9月時点で単行本は202巻まで刊行されており、累計3億部以上を売り上げました。
……だが、物語は続く。
『ゴルゴ13』で知られる漫画家のさいとう・たかを先生が、9月24日にすい臓がんで亡くなられました。84歳でした。66年にわたる画業に終止符が打たれる日がついに来てしまったことが残念でなりません。謹んでご冥福をお祈り申し上げます。
マンガを読んだことのある日本人で、さいとう先生の代表作『ゴルゴ13』を知らない方はいないでしょう。床屋で、ラーメン屋で、コンビニで買ったスペシャル版で、本屋で買った単行本で、駅の売店で買った「ビッグコミック」で。
どこにでもあり、どこででも読めた。それが『ゴルゴ13』という作品でした。それはとてつもなく偉大なことなのです。
どこにでもあり、誰でも読めるということは、多くの人が興味を持つ題材を扱い、理解できるように構成し、すべての絵とストーリーが一定以上のクオリティを保っていなければいけないからです。
世界各地で起こる紛争をはじめとする時事問題を積極的に取り上げ、マンガとしての面白さを追求した作品に仕上げるのは、極めて難易度の高い作業です。しかも『ゴルゴ13』は連載作品であり、年4冊のペースで単行本を刊行しているためスピードも要求されます。
さいとう先生は連載開始当初から『ゴルゴ13』はチームプレーが必要だと判断し、脚本家をはじめ、武器などの資料の担当者、作画担当者といったスタッフを集めて分業制を敷き、結果として50年以上の長期連載を実現させました。
NHKで放送された「漫勉」に登場した際、さいとう先生は「ゴルゴ13」ことデューク東郷のみを自分で描き、他の部分はスタッフに任せる姿が映し出されていました。当時は年齢面の問題かと思っていましたが、いま思い返せば、さいとう先生がいなくなる日に備えた体制だったのです。
結果として、さいとう先生の訃報を聞いたその日に、連載誌であるビッグコミック編集部から「だが、物語は続く」と、衝撃的なリリースが発表されました。
さいとう先生は生前から「自分抜きでも『ゴルゴ13』は続いていって欲しい」という希望をお持ちで、ご自身がいなくても連載を継続できるように、さいとう・プロダクションを作り変えていたそうです。優れた才能を集めて作品を永遠のものとする。さいとう先生が作り上げたシステムが見せてくれた未来は、今後も多くの作品を未完の運命から救い出してくれるのかもしれません。本当に偉大な方でした。