【追悼】さいとう・たかを先生が残した、『ゴルゴ』だけでない偉大な作品たち
ゴルゴだけではない、さいとう先生の残した多彩な作品

もちろん、『ゴルゴ13』だけがさいとう先生の魅力というわけではありません。1967年に「週刊少年マガジン」で連載された『無用ノ介』をはじめ、『影狩り』『雲盗り暫平』『サバイバル』『ブレイクダウン』など、枚挙にいとまがありません。
特に、1970年から約1年間連載した『バロム・1』は、1972年に特撮番組『超人・バロム1』として放送され人気を集めましたが、さいとう先生自身も『バロム・1』に対する思い入れは強かったようです。
マンガ『カメントツ漫画ならず道』(著:カメントツ)で取材を受けたさいとう先生は、『バロム・1』は石ノ森章太郎先生の『仮面ライダー』や『人造人間キカイダー』よりも早かった。現代版へのリブートをやるなら、他の人には任せず自分でやりたい……と語っておられました。実現は極めて難しかったと思われますが、令和の時代に蘇った『バロム・1』をできることなら見てみたかったと思うのは、筆者だけではないでしょう。
旺盛な創作意欲で多数の作品を世に送り出してきたさいとう先生ですが、メインスタッフが逝去した事情もあり、近年は『ゴルゴ13』と『鬼平犯科帳』の2作品に絞って活動されていました。特に『鬼平犯科帳』は原作者の池波正太郎先生が1990年に亡くなられていたこともあって原作が尽きており、池波先生の他の作品からストーリーを借りるなどして今日まで連載が続けられています。
このような創作活動を可能にしたのは、もちろんさいとう先生が作り上げたプロダクションの力であることは間違いないでしょう。2021年には『ゴルゴ13』の外伝である『銃器職人・デイブ』の連載も始まっています。
まだまだやり残したことも多かったと思いますが、さいとう先生のマンガを読むのが生活の一部になっている方々のもとに、これからもずっと新しい作品が送り届けられる。過去、多くの偉大なクリエイターの死とともに抱いた、「あの作品の最後はどうなるはずだったんだろう」という切ない思いを感じなくて済むのは、それは素晴らしいことだと思うのです。
さいとう先生、長い間ありがとうございました。これからも先生の作品を楽しませていただきます。
(早川清一朗)