小栗旬主演の『日本沈没』が放送開始 物語のキーパーソン「総理大臣」役を過去作と比較
小栗旬さん主演ドラマ『日本沈没 希望のひと』が、TBS系にて10月10日よりスタートします。1973年には映画版が大ヒットし、翌年にはTBSが連続ドラマとして放映し、今回は二度目のドラマ化となります。実写化された過去作を振り返りながら、『日本沈没』という物語に欠かせない「キーパーソン」を比較検証してみました。
「1億総中流」化した日本人に衝撃を与えたSF小説
SF作家・小松左京氏のベストセラー小説『日本沈没』をTVドラマ化した『日本沈没 希望のひと』(TBS系)が、2021年10月10日(日)の21時から始まります。1973年に刊行された原作は、高度経済成長を遂げて「1億総中流」と呼ばれるようになった日本人に衝撃を与え、一大ブームを巻き起こしました。
今回のドラマは、2023年の東京が舞台となるそうです。主人公となる環境省の官僚・天海啓示を小栗旬さん、地震学者・田所雄介を香川照之さんが演じるほか、松山ケンイチさん、杏さん、仲村トオルさんらが出演します。
地殻変動によって日本列島が太平洋に沈んでしまうという破天荒なSFストーリーとして知られる『日本沈没』ですが、TBSで2度目となるドラマ化の情報がネット上で広まると「暗いご時世なのに、ドラマまで暗くしてどうする」という声も上がりました。阪神淡路大震災や東日本大震災の記憶は多くの人の脳裏に鮮明に刻まれており、またコロナ禍によって我慢を強いられる生活が続いています。暗いドラマは見たくない、というユーザーの心理はうなずけるものがあります。
はたして『日本沈没 希望のひと』は、気分まで沈みがちな日本人の心を明るくすることができるのでしょうか。過去に実写化された『日本沈没』と比較してみたいと思います。
丹波哲郎が熱演した1973年の映画『日本沈没』
小説が発表されてすぐに制作が始まったのが、1973年12月に公開された東宝映画『日本沈没』(1973年)です。特撮ドラマ『仮面ライダー』に主演し、大人気を博した藤岡弘、さんが深海潜水艇の操縦士・小野寺俊夫を演じました。日本が沈没することを予言する田所博士に小林桂樹さん、かつてない国難に向き合う山本総理に丹波哲郎さんという配役でした。非常に「濃い」顔ぶれが集まり、重厚な演技を見せています。
第2次関東大震災が起き、避難民が皇居前に殺到するパニックシーンや、富士山が大噴火するシーンは大変な迫力がありました。しかし、映画『日本沈没』のいちばんの見せ場は、山本総理に扮した丹波哲郎さんの熱演です。
日本国民1億1千万人を短期間で海外へ移住させることは、容易ではありません。移住計画をシミュレーションした学者たちは、「日本国民はこのまま海に沈んだほうがよい」という極論を出します。その話を涙を浮かべながら聞いた山本総理は、困難を承知で日本国民を脱出させるために奔走します。
「爬虫類の血は冷たかった。しかし、人間の血はあったかい。これを信じる以外にもう何もありません」
山本総理は自分自身にそう言い聞かせながら、各国の首脳たちに難民化した日本人の受け入れを求めて回ります。国民ひとりひとりのために頭を下げ続ける山本総理は、日本映画史に残る「理想の政治家」像となっています。