令和版『日本沈没』は高視聴率をキープ テレビ界のタブーに迫ることは可能か?
関東地方に震度5の強い地震が起き、阿蘇山が噴火するなど、自然災害が次々にニュースとなっています。視聴者の関心が高まるなか、小栗旬さん主演のSFドラマ『日本沈没 希望のひと』は高視聴率スタートを切りました。原作とは違うオリジナル要素の強い令和版『日本沈没』は、どんな展開が待っているのでしょうか?
オリジナル要素が強い小栗旬主演の意欲作

小栗旬さん主演の連続ドラマ『日本沈没 希望のひと』(TBS系)の第2話が、2021年10月17日に放送されました。SF作家・小松左京氏のベストセラー小説『日本沈没』のTVドラマ化は、1974年~75年に放映された村野武範さん主演版に続き、二度目となります。第1話の15.8%(ビデオリサーチ調べ、関東地区/以下同)に続き、第2話は15.7%と高視聴率をキープしています。
昭和に放映された旧ドラマ版は、日本列島が太平洋に沈むという未曾有の大災害のなかで、深海潜水艇の操縦士・小野寺俊夫(村野武範)と資産家の令嬢・阿部玲子(由美かおる)が愛を育む恋愛ドラマにもなっていました。令和の新ドラマ版では、原作小説には登場しない環境省の官僚・天海啓示(小栗旬)が主人公となり、オリジナルの展開を見せています。
関東沈没を予言する田所博士役に香川照之さん、天海と仲の良い経産省の官僚・常盤役に松山ケンイチさん、天海の言動に興味を持つ雑誌記者の椎名役に杏さん……と、主演級の人気俳優が共演する豪華キャスティングも話題となっています。放送日の深夜12時からNetflixで世界配信されているのも、TBSとしては初めての試みです。
日本のTVドラマでは珍しい「ポリティカルサスペンス」
これまで何度も映像化されてきた『日本沈没』ですが、昭和の旧ドラマ版に加え、映画『日本沈没』(1973年)、リメイク版の映画『日本沈没』(2006年)でも、小野寺俊夫が主人公でした。小野寺は深海潜水艇に同乗した田所博士から日本が沈没することをいち早く知らされますが、彼の立場はあくまでも民間人です。これまでの映像化作品では、ひとりの市民の目線から見た日本沈没が描かれてきました。
一方、令和版の主人公・天海はエリート官僚です。他にも東山総理(仲村トオル)、政界に強い影響力を持つ副総理・里城(石橋蓮司)といった政治家や官僚たちが物語を動かしていきます。これは日本のTVドラマではあまり見ることのない、「ポリティカルサスペンス」と呼ばれるジャンルになります。国家レベルでのスケールの大きな物語が展開されるのが醍醐味です。
天海は当初、田所博士が主張する「関東沈没説」を信じていませんでしたが、調査で一緒に深海潜水艇に乗ってから考え方を改めます。彼は、万が一にでも関東が沈没する事態になった際にどうすれば市民の安全を守ることができるかを考えるようになるのです。しかし、田所博士の存在を邪魔に感じる世良教授(國村隼)は調査データを改ざんした上で、「関東沈没はありえない」と断言。そのため、田所博士だけでなく、天海の立場も危うくなります。
政治家や官僚の世界は一枚岩ではありません。利権や自分の立場を守るために、さまざまな謀略が巻き起こっています。第1話を見終わった際は、ゴジラの登場しない『シン・ゴジラ』(2016年)みたいなTVドラマになるのかなと思っていたのですが、第2話からは松坂桃李さん主演の日本アカデミー賞受賞作『新聞記者』(2019年)のような政界の陰謀要素も加わり、ドロドロのドラマが続きそうな雰囲気です。