マグミクス | manga * anime * game

「ジャンプ」打ち切り最終回あるある 本当に「俺たちの戦いはこれからだ!」で終わった作品

打ち切りマンガの最終回あるあるといえば「俺たちの戦いはこれからだ!」でしょう。では実際にどの作品と言われると……? 「週刊少年ジャンプ」を中心に元ネタに最も近い作品を調べてきました。

「俺たちの戦いはこれからだ!」で終わる「ジャンプ」作品はあるのか?

(画像:写真AC)
(画像:写真AC)

「俺たちの戦いはこれからだ!」

 これは打ち切りになった少年マンガの定番のラストシーンとして広く知られているものです。本来予定されていたストーリーが描かれることなく終了してしまった不遇のマンガたち。まさしく「俺たちの戦いはこれからだ!」と言わんばかりの最終回を迎えた作品、きっと皆さんの記憶のなかにもあるはず。とはいえ、実際に「俺たちの戦いはこれからだ!」というセリフで終わった少年マンガは存在するのでしょうか? 本稿ではとりわけ新陳代謝が激しい「週刊少年ジャンプ」のなかから、この最終回あるあるの元ネタに近しいものを探していきたいと思います。

●『男坂』の最終回は有名だけど…

 この「俺たちの戦いはこれからだ!」的な最終回を迎えたマンガの代表格として記憶に刻まれているのは『男坂』(著:車田正美)でしょう。1984年から「ジャンプ」で半年ほど連載されたのち……残念ながら連載は終了。そのラストシーンには「オレはようやくのぼりはじめたばかりだからな このはてしなく遠い男坂をよ…」というかの有名な文言と共に「未完」の文字が堂々と鎮座しています。この最終回こそ、私たちが共有する「最終回あるある」のイメージ形成に大きく影響を与えたことは間違いないでしょう。

 とはいえ、やはり「俺たちの戦いはこれからだ!」と一致しているとも言いがたいので他作品をあたりましょう。ちなみにこの『男坂』、2014年より連載が再開され大きな話題を集めました。

●「最終回あるある」満載の『サスケ忍伝』

 ここで改めて打ち切りマンガにおける「最終回あるある」として知られている展開を整理してみましょう。いきなり最終決戦に入る、急にこれまでの登場人物が全員集合する、大ゴマで敵に向かっていく……などが挙げられると思われます。これら全てを満たした作品が『サスケ忍伝』(著:黒岩よしひろ)です。1986年から「ジャンプ」で10週連載された本作は今も伝説の「打ち切り作品」として語り継がれています。

 文明社会と隔絶した忍者の里で育った主人公・流サスケが妖刀“十六夜”を巡り、獣魔忍群魔忍衆と激しい戦いを繰り広げるという物語だったのですが、その最終回はまさしく怒涛の「あるある」ラッシュ。突如、「本当の敵」が現れて困惑、とりあえずこれまで戦っていた相手との最終決戦を迎えれば、仲間たちが「わたしもいるわよ!」と続々集合。そしていざ一対一の瞬間となれば見開きでサスケが「おおりゃあ!!」と叫んで「完」。また最終回のサブタイトルも「NEVER ENDING BATTLE(そして戦い)」。打ち切りのエッセンスが実に見事に凝縮されており、マンガ史においても重要な作品と言えそうです。なお黒岩先生はその後『鬼神童子ZENKI』(原作:谷菊秀)などでヒットを飛ばし、その優れたキャラクターデザイン能力で以って若手クリエイターたちに少なからぬ影響を与えました。

●そんななか…あの巨匠の作品がほぼ「元ネタ」に近いことが判明!

 打ち切りマンガは数あれど、実際に「俺たちの戦いはこれからだ!」で終わる作品はなかなか見つかりません。やはり上記作品の要素を複合して作られたイメージと考えるのが妥当なのでしょうか。そんななか、ある巨匠の作品が「最終回あるある」に相当近しいことが判明しました。

 それが『キン肉マン』の作者・ゆでたまご先生によるムエタイ格闘マンガ『蹴撃手(キックボクサー)マモル』です。1990年7月に連載開始された本作ですが、ムエタイの認知度も低かったためか、激アツの内容とはうらはらにいまひとつ人気に火がつかず半年で打ち切りの憂き目に。さて、注目すべきはその最終回。サブタイトルもずばり「終わりなき戦い!!」。兄を救うべく挑んだ勝ち抜き戦の途中で物語は無情にも終了するのですが、主人公マモルの最後のセリフはというと……「戦いはこれからだ!!」なのです。さらに次ページの背景にはラスボスが大きく描かれている親切設計。これはもう、ほとんど私たちの知る最終回あるあるの「元ネタ」と言っても過言ではないでしょう。

 以上、本当に「俺たちの戦いはこれからだ!」で終わった「ジャンプ」作品について調べてきました。時代は令和に移り、このような強引な打ち切りは徐々に少なくなってきているようです。打ち切りマンガの最終回あるあるを共有できる時間も、あまり長くはないのかもしれません。

(片野)