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今週の金ロー『ヴァイオレット・エヴァーガーデン外伝』 「花言葉」が示すキャラの人間性

愛する人から呼ばれることで意味を持つ「名前」

『ヴァイオレット・エヴァーガーデン特別編集版』ビジュアル (C)暁佳奈・京都アニメーション/ヴァイオレット・エヴァーガーデン製作委員会
『ヴァイオレット・エヴァーガーデン特別編集版』ビジュアル (C)暁佳奈・京都アニメーション/ヴァイオレット・エヴァーガーデン製作委員会

 TVシリーズのヴァイオレットは、上司であるホッジンズ社長や先輩ドールのカトレアらに支えられ、一人前のドール(自動手記人形)へと成長を遂げました。『外伝』のヴァイオレットは、逆に教える立場に回ります。これまでの体験で学んだことは、他の人に教えることで体系化されていきます。人間味を増したヴァイオレットに導かれ、イザベラは映画『マイ・フェア・レディ』(1964年)のオードリー・ヘップバーンのように美しい淑女へと変わっていきます。

 ヴァイオレットもイザベラも孤児として育ち、ヴァイオレットはギルベルト少佐と生き別れ、イザベラは血がつながっていないものの妹同然に一緒に暮らした幼い少女・テイラーと別れたという共通点があります。ヴァイオレットもイザベラもつらい過去を持っており、それゆえにふたりは強い信頼関係で結ばれることになります。シスターフッド・ムービーとしての趣きがあります。

 イザベラの孤児時代の名前は、エイミー・バートレットでした。仲良くなったヴァイオレットに、イザベラはエイミー・バートレット時代の過去を打ち明けます。バートレットとは洋梨のことで、花言葉は「慰め、癒やし」です。また、「エイミー」という名前は物語後半のキーワードにもなるので、ぜひ覚えておいてください。

 名前とは単なる識別記号ではなく、愛する人から呼ばれることでさまざまな感情が発露する大切な言葉であることが物語られていきます。

「生きた証」としてのクレジット

 京都アニメーションが制作した『ヴァイオレット・エヴァーガーデン 外伝 – 永遠と自動手記人形 -』が編集作業を終えて完成したのは、2019年7月17日でした。あの放火事件は、その翌日に起きています。世界中を震撼させた事件の大きさから、公開が危ぶまれましたが、同年9月6日に劇場公開され、初日満足度調査で1位になるなどファンから高い評価を受けています。

 京アニでは1年以上の経験を有するスタッフのみ作品にクレジットすることが慣例となっていましたが、『ヴァイオレット・エヴァーガーデン 外伝 – 永遠と自動手記人形 -』には制作に関わったすべてのスタッフの名前が「生きた証」としてエンドロールにクレジットされています。

 事件によって、多くの尊い命が奪われ、また残された人たちも心に深い傷を負っていることでしょう。時間を巻き戻して、つらい過去をなかったことにすることは残念ながらできません。アニメーション制作に情熱を注いだスタッフの想いを、作品を通して受け止めることしか私たちにはできません。

 ヴァイオレット(紫スミレ)の花言葉は「貞操」「愛」ですが、スミレ全般の花言葉は「謙虚」「誠実」「小さな幸せ」となっています。手紙の代筆業を営むヴァイオレットが、これからも「小さな幸せ」の種を、世界中に撒き続けることを願います。

(長野辰次)

【画像】ヴァイオレットと「エイミー」の睦まじい姿

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