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『バーチャファイター2』が変えた格ゲーの歴史とは? 夢と希望が「無限」にあった

1994年11月に登場したアーケード版『バーチャファイター2』は前作から遥かにグレードアップしたグラフィックはゲーマーたちに大きな衝撃を与え、ゲームセンターに対戦台がずらりと並びました。また、プレイヤー個人にスポットが当たった最初期の作品でもあり、有名プレイヤーは「鉄人」と呼ばれ人気を獲得していました。

青春と共にあった『バーチャファイター2』

「バーチャファイター」シリーズの楽曲のリマスター版全32曲を収録『バーチャファイター ベストトラックス+ワン』(Harmonics Music)
「バーチャファイター」シリーズの楽曲のリマスター版全32曲を収録『バーチャファイター ベストトラックス+ワン』(Harmonics Music)

 衝撃、驚愕、沸騰、熱気。

 1994年11月に稼働が開始された『バーチャファイター2』のことを思い出すとき、同時にさまざまな感情や光景があふれてきます。今よりも世の中にもっとゲームセンターがあふれていた時代、どこのゲーセンにもずらりと対戦台が並べられ、その後ろには順番待ちをしている若者が列を作り、自分の番を今か今かと待っていたものです。

 当時の筆者は地方在住の格闘ゲーム好きの学生でしたが、少し腕を上げて聖地のひとつ「新宿カーニバルプラザ」に遠征し、さんざん並んだあげく2ラウンド連続でカゲに押し出された記憶は、今も衝撃と共に脳裏にこびりついています。あのときはあまりにひどい負け方に屈辱を覚えたものですが、あれから25年以上が経過し、今では対戦格闘ゲームに青春を捧げた頃の懐かしい記憶となっています。

 オンライン対戦が一般化し、多くのゲーセンが姿を消した現在では、タバコの煙が充満し、薄暗い空間に電子音が鳴り響き、多くの若者の情熱とコインが無限に注ぎ込まれた懐かしい光景を見ることはもうかないません。あの猥雑な世界にノスタルジーを感じる日が来るなどと、当時はひとかけらも思いませんでした。

 あれは、青春だったのです。

 それにしても、なぜ『バーチャファイター2』は時代を代表する作品となったのでしょうか。

 まず挙げられるのは、当時としては最高峰をさらに上に突き抜けた高精度なグラフィックです。

 前作『バーチャファイター』とは比較にならないほど美しく仕上げられたキャラクターが、華麗に素早く自在に動くのは大きな衝撃でした。当時のゲームセンターに集っていた若者たちは、子供の頃にファミコンに夢中になっていた世代です。ファミコンのドット絵からたったの10年程度でここまで来たのか。こんなすごいものが世の中に出てきたんだ。これからはもっとすごい物が見られるんじゃないか。そんな夢と希望を無限に持てた時代でもあったのです。

有名プレイヤー「鉄人」の存在

PlayStaion 3用ソフト『バーチャファイター5』(セガ)
PlayStaion 3用ソフト『バーチャファイター5』(セガ)

 また、この時期の対戦格闘ゲームはゲーマーそれぞれが地元のゲーセンに入り浸って遊ぶものだったため人間関係は狭く、それぞれの店のなかで競い合うのが一般的でした。 当然、全国に名前がとどろく有名プレイヤーはほとんどおらず、雑誌「ゲーメスト」が開催した大会で優勝したプレイヤーの名前が、ごく一部の人間の間でだけ語られる程度でしかなかったのです。

 その状況を大きく変えたのが『バーチャファイター2』でした。

 池袋サラに新宿ジャッキー、柏ジェフリー、キャサ夫、ブンブン丸といった鉄人と呼ばれたプレイヤーたちは絶大な人気を獲得し、彼らがプレイする台には多くの人が押し寄せ、息が詰まるほど密集しながら一挙手一投足を食い入るように見つめていたものです。

 その人気はゲーセンのなかだけに留まらず、テレビやイベントにも数多く出演を果たし、『バーチャファイター2』が時代を動かす力を持つムーブメントであることを証明していました。

 翌1995年にはサガサターン版も発売され、アーケードよりも性能が劣る家庭用ハードにも関わらず高度な移植を実現。ポケットのコインの残りを気にせず練習ができるようになり、『バーチャファイター2』の勢いはさらに加速していきました。友達の家に押しかけて、徹夜で対戦を繰り返した記憶を持つ方も多いのではないでしょうか。

 あれから25年以上の時間が経ち、かつてのプレイヤーたちが歳を重ねるのと同じくして、『バーチャファイター』も共に時代を歩んできました。2010年に発売された『バーチャファイター5 ファイナルショーダウン』を最後に10年以上新作が登場していなかった「バーチャファイター」シリーズも、2021年になり、『ファイナルショーダウン』をリメイクした『Virtua Fighter esports(バーチャファイター eスポーツ)』が登場し、新たな展開を見せています。

 当時『バーチャファイター2』に熱狂した若者たちも今や40代を超え、社会の中核を担い忙しく働いている方も多いでしょう。筆者もなかなかゲームを遊ぶ時間は取れませんが、過去を懐かしみながら未来を追いかけていく道のひとつとして、ステックを握り、ボタンを叩いています。

 やっぱりね、対戦は今やっても面白いですよ?

(早川清一朗)

【画像】『バーチャファイター2』前の「格ゲー」

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