【シャーマンキング30周年への情熱(49)】珠玉のエピソード「恐山ル・ヴォワール」編が放送開始
アニメ版「ル・ヴォワール編」に込められた製作陣の意思
さて「恐山ル・ヴォワール」編は、前回のテレビアニメ化の際は映像になっておらず、ドラマCDのみが存在します。そのため今作は原作を全て描くと明言されても、ここがどうなるのかと気にしていたファンもいたでしょう。確かに原作の「ル・ヴォワール」編はプロローグを入れると全16回の長さですし、番外編でもあります。しかし実際にはこうしてしっかり描かれているのみならず、できるだけ劇中と現実世界の時期を合わせて放映されています。なんと心憎い演出でしょうか!
このことから見えてくるのは、今回のアニメは最初から「恐山ル・ヴォワール」編をこの時期に放送する前提で組み立てられていたということです。放映開始時期から計算すれば、およそここで30話が放映されることはわかっています。それを「ル・ヴォワール」編の初回に設定し、ずらすことのできない重要ポイントとして位置づけた上で周りを固めていった……そう考えられるのです。OP・EDがいつ何回変わるかも最初から決まっていますし、そのうちの1回を「ル・ヴォワール」編に特化したことも含めて考えれば、いかに製作陣がここを大事に考えていたかがわかります。
それというのも、実は10年以上前、あるファンの手によってマタムネの詩に曲と歌を付けた映像が、動画サイトに投稿されました。それは多くの視聴数を記録し、公式にも認められ、後にアンナ役の林原めぐみさんご本人が歌うという、まさにファンから生まれファンが育てた夢のような事例があったのです。夢はそれで終わらず、現在各地で開催されている「シャーマンキング展」ではその曲が流れ、CDも発売されています。ファンの生み出したコンテンツが、今では作品の一翼を担うほどのものになっているのです。
「恐山ル・ヴォワール」編は、このように人気の象徴とも言えるエピソードですから、新しいファンの獲得を願うなら疎(おろそ)かにするはずがありません。それはおまじないであり、意思表明なんですね。「ル・ヴォワール」編の放送は今後数回続きますが、さまざまな人の想いが込められたものなので、じっくり味わって楽しんでいただきたいと思います!
なおこの連載では、「恐山ル・ヴォワール」編の舞台となった青森市~恐山を取材したレポートを2020年末に掲載しています(第19回~22回)。こちらもあわせてぜひご覧いただければと思います。
それでは今回はこの辺で。また次回よろしくお願いします!
(タシロハヤト)
(C)武井宏之・講談社/SHAMAN KING Project.・テレビ東京