名作アニメ「実写化」で別モノになった主題歌3選。まさかの大物ロックスターの曲まで…
名作アニメがファンの記憶に残っているのは、作品にマッチしたカッコイイ主題歌の存在も大きいでしょう。しかし、人気が出たアニメが実写化された際に、おなじみだった主題歌ではなく別の主題歌が作られ、ファンが困惑したケースもありました。今回はそんな人気アニメの実写版独自の主題歌について掘り下げます。
宇多田ヒカルの曲も確かに素晴らしいが……

大人気マンガの実写化企画は、キャスティングや設定変更、オリジナル要素の追加など、原作と違った部分が批判の対象となってしまう……というリスクがつきものです。さらに、アニメ化もされた作品実写化された場合、「主題歌」はどうするのか? という問題も出てきます。
ファンであれば、エンドロールや劇中のここぞという場面でアニメでおなじみとなった主題歌などが流れてほしいと期待してしまいますが、そうした期待に反して、アニメとはまるで違うオリジナルの主題歌が流れてしまったケースもありました。
●宇多田ヒカル「Show Me Love (Not A Dream)」……映画『あしたのジョー』(2011年)
ボクシングマンガの金字塔『あしたのジョー』は、 2011年に実写映画が公開されました。70年代に放送されたアニメ版『あしたのジョー』では、作詞・寺山修司、作曲&編曲・八木正生、歌・尾藤イサオによるオープニング「あしたのジョー」があまりにも有名で、今なお同作を象徴する楽曲となっています。
ど定番の主題歌なので、実写版ではどこで使われるのか注目が集まっていたのですが、映画『あしたのジョー』では劇中で少し流れただけ。その他のアニメの名曲「ジョーの子守唄」「力石徹のテーマ」などは流れませんでした。
エンドロールで代わりに流れたのは、宇多田ヒカルさんの「Show Me Love (Not A Dream)」です。この曲はさすが宇多田ヒカルというべきクオリティで、歌詞もリングで命を懸ける男たちの物語にマッチしてはいるのですが、どうしても『あしたのジョー』を見た……という感覚は薄れてしまいます。
公開当時も、往年の楽曲がないことに一部で批判がありました。実写版『あしたのジョー』は力石役の伊勢谷友介さんが体を極限まで絞って熱演を見せたので、せめて「力石徹のテーマ」は流してあげればよかったかもしれません。
●宇都宮隆「Dance Dance Dance」……映画『シティーハンター』(1993年)
北条司の人気マンガ『シティーハンター』のアニメ版エンディングテーマといえば、言わずと知れたTM NETWORKの「Get Wild」。2020年には、帰宅時に職場のドアを出たタイミングでこの曲を聴き始めるとさわやか気分で仕事が終えられるという「getwild退勤」なる言葉も話題になるなど、流れるだけで「プロがひと仕事終えた」感が醸し出される名曲です。
2019年に日本公開されたフランスでの実写版『シティーハンター THE MOVIE 史上最香のミッション』では、エンドロールで「Get Wild」の原曲がそのまま流れ、リアルタイムのファンたちを歓喜させました。しかし、そこからさかのぼること約四半世紀、1993年に公開された最初の実写版『シティーハンター』は、主題歌だけでなくすべてのテイストが原作とだいぶ違ったのです。
そもそも同作はアクションスター、ジャッキー・チェンさんがファンから「冴羽リョウに似ている」と言われたことで作られた香港映画であり、ジャッキーお得意のカンフーコメディ色が強い作品になっていました。海坊主も出てこないし、槇村香よりも後藤久美子さん演じるオリジナルキャラ「今村清子」がメインヒロイン扱いです。
そして、日本公開時にエンドロールで流れた主題歌は宇都宮隆さんの「Dance Dance Dance」でした。もちろんアニメ版とは何の関係もないですが、エンドロールではいつものジャッキー作品と同じく「NG集」が流れるので、明らかに「Get Wild」はそぐわないでしょうし、これでよかったのかもしれません。
ちなみに、劇中では『ストリートファイターII』のキャラに扮して戦うシーンや、とんねるずの「ガラガラヘビがやってくる」を香港の音楽ユニット・軟硬天師がカバーした「HAPPY HAPPY GALA GALA」が流れる場面などがあり、かなり時代を感じさせます。
●スティーブン・タイラー「LOVE LIVES」……映画『SPACE BATTLESHIP ヤマト』(2010年)
『宇宙戦艦ヤマト』も、作品を象徴するささきいさお氏による超有名な主題歌「宇宙戦艦ヤマト」があります。この曲がなければ『宇宙戦艦ヤマト』を見たという気にはなれないのではないでしょうか。
そんな『宇宙戦艦ヤマト』シリーズ唯一の実写版『SPACE BATTLESHIP ヤマト』でも、もちろん「宇宙戦艦ヤマト」は流れます。劇中でメロディーのみ……。ちなみにアニメのエンディング曲「真赤なスカーフ」は流れません。
エンドロールでは代わりに、エアロスミスのボーカル、スティーブン・タイラー氏が初のソロ名義で手掛けた楽曲「LOVE LIVES」が流れます。ここまでの海外大物アーティストが邦画の主題歌を歌ってくれるのは異例であり、貴重なことですが、「なぜ『宇宙戦艦ヤマト』の実写版で……?」という気もしましたし、実際映画を見たファンの間でも当惑の声がありました。
タイラー氏は山崎貴監督からの熱烈オファーを受けて、作品資料を読み込んで曲を作り上げたとのことで、しっかり思いを込めていたようですが、どうしてもエンドロールでこの曲が流れると、エアロスミスがテーマ曲を手掛けた『アルマゲドン』を思い出してしまいます。とは言っても、『SPACE BATTLESHIP ヤマト』の結末を見ると、まさにその『アルマゲドン』感を狙っていたのかもしれません。
こうしてアニメの実写化作品で流れたオリジナル主題歌を振り返ると、もちろん安易にアニメ版と全く同じ曲を流せばいいというわけではないでしょうが、原作に敬意を払いつつ新しいものを作るという難しさも、改めて感じさせられます。
※冴羽リョウの「リョウ」は、正しくは「けものへん+うかんむりなしの寮」。
(マグミクス編集部)