『鬼滅の刃 遊郭編』をもっと楽しむ! 「遊郭」5つの基礎知識
TVアニメ『鬼滅の刃 遊郭編』は、派手を愛する元忍の音柱・宇髄天元に率いられた炭治郎、伊之助、善逸の成長と3人の思いがけない姿、禰豆子のピンチ、天元の3人の妻、上弦の陸の強さと悲惨な過去など見どころが満載。「遊郭編」をもっと楽しむための遊郭の基礎知識をご紹介します。
独特の名前が付けられた遊郭の職業
2021年12月5日にTVアニメ『鬼滅の刃 遊郭編』の放送が始まり、12日放送の第2話からは、いよいよ吉原遊郭を舞台に物語が進んでいきます。
「遊郭編」では、派手を愛する元忍びの音柱・宇髄天元に率いられた炭治郎、伊之助、善逸の成長と3人の思いがけない姿、禰豆子のピンチ、天元の3人の妻、上弦の陸の強さと悲惨な過去……など見どころが満載。遊郭について知らなくても、もちろん楽しめますが、チラッとでも知っていれば、もっと楽しめそうです。
この記事では、「遊郭編」をもっと楽しむための遊郭の基礎知識をご紹介します。
※この記事では、まだアニメ化されていないシーンの記載があります。原作マンガを未読の方はご注意ください。
●遊女たちの生活は?
吉原遊郭は、東京では、唯一の公的に許された遊郭で、江戸時代から1952年(昭和27年)まで続きました。当初は現在の日本橋人形町周辺に作られましたが、明暦の大火による類焼をきっかけに1657年、浅草寺の奥にあたる山谷地区に移転。吉原は明治時代までに24回も全焼しています。
1750年以降は、およそ2000~3000人の遊女がいて、春の夜桜や秋の灯篭などの行事は大いに賑わったようです。おはぐろ溝(どぶ)によって一般社会と隔離されていた吉原では、商人や職人、医師までが吉原のなかにいて生活がまかなわれていました。
●あいまいな「花魁」のランク
「遊郭編」にも、鯉夏花魁(こいなつおいらん)、蕨姫花魁(わらびひめおいらん)といった花魁が登場します。「花魁」というのは、吉原の高級遊女の別称です。ただ、「花魁」というのは尊称的美称であったため、どの階級の遊女のことを言うのかは、はっきりしません。自分専用の座敷を持つ「座敷持ち」以上か、自分専用の部屋を持つ「部屋持ち」以上を指すとされていたのも、時代とともにうやむやになり、大正時代には遊女全般の呼称になっていたようです。
作中に描かれている鯉夏花魁の花魁道中は、新造や禿、傘持ちなどを引き連れて歩いており、客を迎えに行っているところからも、彼女が最上級の花魁であることが分かります。一方で大正時代には、観光用に催される花魁道中もあり、ショー化されて豪華さを増したものもあったようです。
●「女衒」は天元には当たり役!?
諸国を巡り歩いて貧農の娘などを探し出し、親や本人を説得して勧誘し、遊女屋への身売りの仲介をするのが女衒(ぜげん)と呼ばれる男性たちです。俗には「人買い」とも言われています。
女衒は性格が優しく、見た目もスラッと上品な「優男」が適任だったと言われます。これはひとえに、買ってきた少女を安心させ、男性への恐怖感をやわらげるためと思われます。少女たちが優男にほのかな恋心でも抱けば、遊女屋に連れて行くのも容易ですし、途中で逃げてしまうこともないでしょう。
ということであれば、天元は女衒に最適と言えそうです。顔良し、体格良しで、遊女屋では、女将さんや遣り手をポーッとさせて、とんでもない女装の炭治郎と伊之助、善逸を売り込んでしまうのですから。
●店と遊女、客の三者を取り仕切るOG「遣手」
遣手(やりて)は、遊女たちの素行や勤務状況を監視したり、客の懐具合を品定めして遊女の割り振りを決めたりといった仕事をする女性です。遊女たちが店にしている借金の勘定などもしており、遊女たちにとっては煙たい存在だったと言えるでしょう。遊女あがりのOGが務め、店と遊女、客の三者をうまく取り仕切る才覚が必要でした。
伊之助が女装した「猪子(いのこ)」のヘンテコな化粧の下に隠された美しい素顔を見抜いたのは、荻本屋の遣手でした。
●遊女屋の男性従業員「妓夫」
妓夫(ぎゅう)は、遊女屋で働く男性従業員で、牛太郎(ぎゅうたろう)とも呼ばれます。大店では客引きをする者、書類を作る者、飲食物を運んだり掃除をしたりする者、寝具などを扱う者、料金の取り立てをする者がおり、妓夫の仕事も分業制になっていました。そして、職種によって定額制、歩合制、無給で祝儀のみといったように給料体制が異なりました。
妓夫太郎、牛太郎という呼び名は、現代で言えば「店員さん」でしょうか。であれば、それがそのまま名前にはなりにくいものですが……。
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「遊郭編」では、遊郭の華やかさとその影の部分が浮き彫りにされます。激しいバトルシーンと合わせて映像美を堪能したいですね。
※禰豆子の「禰」は「ネ」+「爾」が正しい表記
(山田晃子)