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『終末ツーリング』で描かれる、朽ち果てた日本。ドキドキも謎解きもある少女たちの旅

さいとー栄先生のマンガ『終末ツーリング』が連載中で、単行本も2冊発売されています。ポスト・アポカリプスの世界を、バイクで旅する少女らを描いた本作には、いくつもの読み応えが詰まっています。

ワクワクも、さみしさも、ドキドキも。

『終末ツーリング』2巻(KADOKAWA)
『終末ツーリング』2巻(KADOKAWA)

 誰もいない朽ち果てた終末世界を、ふたりの少女がバイクで駆け回るマンガ『終末ツーリング』が、KADOKAWA「電撃マオウ」で連載中です。ふたりの少女ヨーコとアイリは、電動化されたヤマハ「セロー225」に乗ってトコトコと進みます。彼女らが進むのは、人の気配がない箱根、横浜、東京ビッグサイトなど、日本の観光名所です。

 野生の動物たちが闊歩して、建物は荒廃し変わり果てた街並み。彼女たちは、姉が各所で撮った写真を頼りに、バイク旅を楽しみます。

●未知と出会う旅へのワクワク

 筆者は乗り物全般を運転できないのですが、なぜかバイク車載動画をよく観ます。天気や気温、安全性など大変なところはあるけれど、美しい景観を風を切るように走るバイク旅に、なぜか心惹かれるところがあるのです。

 ヨーコとアイリが旅先で出会う、巨大な生物や過去の繁栄を思わせる廃墟たち。形は違えど、未知のものと出会うというのは旅の楽しみそのものです。ふたりのワクワクにシンクロして、次に彼女らは何を見て、何を感じるんだろうと物語に引き込まれていきます。

●終末世界の寂しさ、切なさも

 人類の滅亡や世界の終末を描くポスト・アポカリプス作品は、そのほとんどに「さみしさ」がつきまといます。目につくモノすべてが、その役目を終えたか終えつつあり、今を生きる人たちにも、終わりへと進む絶望感を突きつけてきます。

『終末ツーリング』も、各話で「過去に終わったもの」「ゆっくり終わりへと向かうもの」の姿がチラホラ現われては、こっそりと物語から退場していきます。第2話の横浜・横須賀編は、そんな余韻たっぷりのストーリーで、何度も読み返す味わいがあります。

●謎に満ちた主人公たちの背景が気になる!

 ヨーコたちの旅のガイド役は、ヨーコの姉が過去にSNSへ投稿した写真です。第1話で登場した投稿の日付は、2035年3月24日。ごく近未来に、世界が終わりを迎えたのだと分かりますね。

 はっきりと分かる過去の情報とは裏腹に、ヨーコたちが西暦何年に旅をしているのかは、はっきりと書かれていません。

 シェルターを出るまで、一度も外に出たことがなかったと推察できる言動が目立つヨーコ。腕から山を貫くレーザーを撃つ少女・アイリ。ヨーコが意識を失った時に見る、人びとが行き交う在りし日の日本の姿……彼女らの生い立ちが、すごく気になります!

 2巻に入り、序盤ならではの物語の広がりはさらに加速。旅のワクワクも終末世界のドキドキも、作品すべての面白さを味わいながら、ヨーコとアイリの今後の展開を楽しみませんか?

(サトートモロー)

【画像】朽ち果てた東京ビッグサイトも…『終末ツーリング』ふたりの少女が訪れた名所(8枚)

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