面白さを説明しづらい名作マンガ3選 読まないと良さが伝わらない!
人にマンガをおすすめしたものの、「どんなマンガ?」と聞かれて説明に困った、という経験をした方は多いはず。この記事では、そういった「面白さを説明できないマンガ」を3作ご紹介します。
読まないと面白さが分からないマンガ
面白いマンガに出会ったら、人にもおすすめしたくなるものです。そんなとき、相手から聞かれるのが「どんなマンガなの?」という質問。しかし、闇鍋のようにいろんな要素が混じっていたり、独特のノリが魅力だったりする作品は、あらすじを言えても、「何が面白いのか」という本質の部分をなかなか伝えられないものです。
この記事では、なかでもプレゼンが難しい「読まないと面白さがわからないマンガ」を3作ピックアップしてご紹介します。面白さはとうてい伝えきれませんが、ほかにない魅力を持った名作であることは間違いありません。未読の作品があった方は実際に読んでみて下さい。
●『ゴールデンカムイ』 作:野田サトル
「週刊ヤングジャンプ」にて連載中の人気作『ゴールデンカムイ』。本作には、「アイヌが残した金塊を探す」という本筋となるストーリーが存在しています。争奪戦になり、バトルもあるため、「冒険バトルマンガ」という分類もできなくはないのですが……それだけでは、あまりに作品の雰囲気が伝わっていません。
まず、大きな要素として、アイヌの文化を学ぶ面白さが入っています。狩りの方法や住居環境、信仰など、その情報量はかなりのもの。単行本の巻末には膨大な出典が記載されており、作者が相当勉強をして描かれているのが分かります。そのため、ストーリーを抜きにして、文化・歴史の面白さだけでも成立するほどです。
そして、アイヌ文化のなかでも、特に力を入れて描かれているのがグルメです。出てくる食材はリス、ヒグマ、ウミガメ、ラッコなどなじみのないものばかりですが、調理法が細かく描かれており、不思議とお腹が空いてきます。つまり、グルメマンガでもあるのです。
さらに、ギャグも満載なのが特徴。知略・謀略うごめくストーリー、ハードボイルドなバトルシーンの合間に、著しく下品なネタが随所に盛り込まれ、異様なノリを生み出しています。
このように要素がてんこ盛りの「闇鍋マンガ」であるため、未読の人に面白さを説明することは困難となっています。しかし、それらの要素がすべて面白く、間違いなく名作です。
独自の世界観が「形容不可能」な名作
●『ダンダダン』 作:龍幸伸
続いて、「少年ジャンプ+」にて連載中の『ダンダダン』をご紹介します。第1話の冒頭では「オカルティック怪奇バトル」と紹介されており、実際、幽霊・宇宙人・超能力が入り乱れた、剛腕なバトル描写も魅力のひとつ。しかし、ほかにもさまざまな要素が盛り込まれているのです。
まず、本作はギャグ要素も強い作品となっています。なにせ途中からストーリーの軸となるのは、主人公の下半身から失われた“タマ”探し。「最強になりたい」「王様になりたい」といった、王道バトルマンガのような目標は一切ありません。
かといって、バトルもギャグっぽいのかと言われれば、一概にそうとは言えません。セリフの掛け合いはギャグもありますが、敵となる幽霊・宇宙人のデザインは本当に不気味。週刊連載と思えない圧倒的な画力で描かれており、アクションの決めゴマは突き抜けた迫力があります。
そして、本作は青春ラブコメでもあるのです。主人公のふたりは同じ高校に通う男女なのですが、時には偶然キスをしてしまう……といったド直球のラブコメ展開も。ほかのパートが型破りなだけに、同じマンガと思えないほどの緩急があります。
こういったさまざまな魅力を持つ『ダンダダン』は、公式PVでも「形容不可能」とうたわれているほど。まだ単行本が3巻までしか出ていない作品のため、説明を聞いて想像するより、読んだ方が早いでしょう。
●『大ダーク』 作:林田球
ラストは、『ドロヘドロ』でも知られる林田球先生の最新作『大ダーク』。2019年から「ゲッサン」で連載されています。
あえてジャンル分けをすると、本作は宇宙を舞台としたSF・ファンタジー作品です。主人公のザハ=サンコは、「どんな願いも叶える」という骨を持っているため、多くの宇宙人から狙われている存在。襲ってくる敵を相棒・アバキアンとともに倒していく、というのが本筋となっています。
ストーリーは言葉でも説明できますが、本作を読んだときに強烈な印象を受けるのは、それよりも絵とセリフのパワーではないでしょうか。登場キャラクターのデザインにはドクロが使われ、服装も黒い布をまとっているなど、ダークな世界観です。バトルでも残虐な描写がたびたび登場します。しかし、会話の内容はポップで、怖い見た目のキャラクターが不思議とかわいく思えてくるのです。
未読の方にこの独特な雰囲気を伝えるのは、非常に難しいことです。表紙だけを見て想像するイメージと、読んでみての感想も間違いなく異なるため、気になった方はぜひ手に取ってみて下さい。
(古永家啓輔)