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【追悼】声優の八奈見乗児さん 誰もが使う「ポチる」はアドリブから生まれた?

アドリブの達人としてTVアニメ創成期から第一線で活躍してきた声優の八奈見乗児さん。その活躍は誰もが知るところですが、一般用語にまでなった「ポチる」は八奈見さんのアドリブから生まれたものでした。

博士からコメディリリーフまで幅の広いバイプレイヤー

八奈見乗児さんが演じた高齢の役柄のひとつが、アニメ『ビックリマン』のスーパーゼウスだった、画像は「ビックリマン DVD-COLLECTION VOL.1」(東映ビデオ)
八奈見乗児さんが演じた高齢の役柄のひとつが、アニメ『ビックリマン』のスーパーゼウスだった、画像は「ビックリマン DVD-COLLECTION VOL.1」(東映ビデオ)

 声優として長年活躍してきた八奈見乗児さんの訃報が伝えられました。八奈見さんがお亡くなりになったのは2021年12月3日のこと、90歳だったそうです。生前、声優としてTVアニメ最初期からご活躍されたその功績を、演じてきたキャラたちを振り返ることで思い出していきましょう。

 八奈見さんの演じたキャラでもっとも古くて代表的なキャラは、やはり『巨人の星』(1968~1971年)の伴宙太だと思います。独特の野太い声を、モノマネでやっていた人も多くいました。実は八奈見さんは老け役が多かったことから、十代の声は無理だと一度は断ったところ、スタッフから「思ったように演じてください」と言われて引き受けたそうです。

 筆者としては、この少し前に演じた映画版『サイボーグ009』(1966年)のアイザック・ギルモア博士も思い出されます。1968年にTVで放送された白黒版も演じていました。八奈見さんといえば博士役が多いイメージですが、大きく分けてギルモア博士のような理知的な人物と、いかにもマッドサイエンティストといった風体の博士役に分けられます。後者の先駆けは、おそらく『ハッスルパンチ』(1965年)のガリガリ博士でしょう。

 この他、怪人ものとも言うべき変なキャラも独特のアドリブを加え、唯一無二ともいえる怪演を見せてくれました。『もーれつア太郎』(1969~1970年)のココロのボス、『デビルマン』(1972年)のポチ校長、『ミクロイドS』(1973年)のノラキュラ先生など、一度聴いたら忘れられない印象を与えてくれています。

 芸達者な部分はアドリブだけでなく、同一作品内で敵味方別のキャラを演じることも多くありました。『ゲッターロボG』(1975年)では車弁慶と百鬼大帝ブライ、『UFOロボ グレンダイザー』(1975年)では宇門源蔵博士と恐星大王ベガ、『惑星ロボ ダンガードA』(1977年)では佐渡酒造とヘチ副総統といった具合です。

 もちろん、こういった作品のほかにも『ゲゲゲの鬼太郎(第3作)』(1985~1988年)の一反もめん、『ドテラマン』(1986年)のインチ鬼大王こと鈴木繁、『のらくろクン』(1987年)ののら山くろ吉、『ビックリマン』(1987~1989年)のスーパーゼウス、『チンプイ』(1989年)のワンダユウなど、代表作を挙げてもキリがありません。それだけ八奈見さんが日本のTVアニメ黎明期から稀代のバイプレイヤーとして活躍してきたかということでしょう。

 もちろん洋画などでも活躍していましたし、『アクマイザー3』(1975年)のガブラは特撮ファンの間で忘れられない印象的なキャラとして人気がありました。反面、声優として顔出しNGだったので、TV番組に登場することはあまりありません。あくまでも声の仕事を本業として考えていたのでしょう。

【画像】「印象に残る役」が多すぎ? 八奈見乗児さんが声をあてたアニメ作品たち(5枚)

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