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【追悼】声優の八奈見乗児さん 誰もが使う「ポチる」はアドリブから生まれた?

アドリブの達人が生み出した、後世に残る言葉

八奈見さんは、現代にも受け継がれる『ヤッターマン』ボヤッキーの名セリフを生み出している。画像はボヤッキーを主人公としたマンガ『ヤッターマン外伝ボケボケボヤッキー」第1巻 (小学館)
八奈見さんは、現代にも受け継がれる『ヤッターマン』ボヤッキーの名セリフを生み出している。画像はボヤッキーを主人公としたマンガ『ヤッターマン外伝ボケボケボヤッキー」第1巻 (小学館)

 八奈見さんが演じたキャラでもっとも有名なものといえば、タイムボカンシリーズの三悪人のひとり、という意見が大多数かもしれません。『タイムボカン』(1975~1976年)のグロッキー以降、シリーズで三悪人の頭脳担当キャラを演じてきた八奈見さん。その活躍は飛び飛びでしたが、最後の出演作となった『ヤッターマン(第2作)』(2008~2009年)まで30年以上も演じていました。

 悪役なのにどこか憎めないというキャラは、このシリーズの三悪人が元祖とも言われていて、今なお後続するアニメ作品にも影響を与え続けています。また、「女子高生のみなさ~ん」、「今週の〇〇」などの名セリフや、マンネリギャグが長期にわたってシリーズを支えてきました。

 そのなかでも、『ヤッターマン』(1977~1979年)のボヤッキーがよく使っていた「ポチッとな」が、一番有名かもしれません。

 その後、他のアニメ作品でも使われたことでも有名ですが、ネットスラングで「ポチる」という購入ボタンを押す行為にまで使われるようになりました。この「ポチっとな」は八奈見さんのアドリブで、ボヤッキー以外のキャラでは「プチュっとな」(グロッキー)、「デボっとな」(『ゼンダマン』(1979年)のトボッケー)など、キャラによって違っています。また、八奈見さんのアドリブの多さにシリーズ途中から、セリフの尺を多めにしていました。

 もうひとつ、八奈見さんが参加した作品の中で筆者が印象深いのは『ドラゴンボール』(1986~1989年)シリーズです。ブリーフ博士、国王、界王、バビディなどのキャラも印象深いのですが、サブタイトルが出る前のアバンでのナレーションが頭から離れません。みなさんも『ドラゴンボール』の語り部としてのイメージが強く残っていませんか?

 結果的に八奈見さんの遺作となった『ドラゴンボール超』(2015~2018年)で途中降板した時は心配しましたが、その後は体調も良くなっていたそうです。しかし、復帰することもなく静かに声優としてピリオドを打ったと聞きました。「老兵は死なず ただ消え去るのみ」そんな思いがあったのかもしれません。

 八奈見さんが亡くなられて悲しい気持ちはありますが、これからも残してくれた作品をまだまだ楽しんでいこうと思います。あらためまして、八奈見乗児さんの御冥福を心からお祈り申し上げます。

(加々美利治)

【画像】「印象に残る役」が多すぎ? 八奈見乗児さんが声をあてたアニメ作品たち(5枚)

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