特撮『サンダーマスク』はもう見られない? 高視聴率なのに「封印」された残念すぎる理由
1972年に放送された『サンダーマスク』は、視聴率15%をマークした人気特撮で、DVDなどのソフト化を希望するファンが多い作品です。しかし、放送からまもなく50年になろうとしている現在も、ソフト化や再放送がない「封印作品」となっています。
等身大から巨大化!2段変身だ!サンダーマスク!

第2次怪獣ブーム時代、視聴率15%をマークした人気特撮ヒーロー番組『サンダーマスク』(1972~73年 全26回)は、1994年に中京テレビで数話だけ再放送されて以来、地上波、衛星放送、ケーブルテレビでも放送されていません。ビデオ、DVD、Blu-rayなどのソフトも一切なし。なぜ全てお蔵入りになってしまったのでしょうか。ファンの間では有名かもしれませんが、改めてその経緯をひも解いてみましょう。
『サンダーマスク』のストーリーは、地球侵略をたくらむ魔人デカンダが繰り出す魔獣に、1万年の眠りから目覚めたサンダー星の勇者サンダーマスクが立ち向かう、というもの。人の姿をした命光一がサンダーマスクに変身! 最初は等身大、その後巨大化して魔獣と戦うという展開が定番でした。
制作の経緯も説明しますと、1973年11月に手塚治虫のアニメ制作会社「虫プロダクション」が倒産、その後スタッフの数人が「ひろみプロ」を立ち上げます。そこで「手塚治虫先生によるウルトラマンのような実写ヒーローを作ろう」という企画が持ち上がり、当時は中堅の広告代理店でのちに『機動戦士ガンダム』が大ヒットする「東洋エージェンシー(現・創通)」と共同制作という形で特撮版『サンダーマスク』がスタート。その際、ひろみプロから手塚治虫氏にコミカライズをお願いした経緯で「少年サンデー」での連載も始まり、同時進行の相乗効果でテレビ視聴率も好調でした。
特撮ヒーロー群雄割拠のなか、『サンダーマスク』は人気番組となりますが、実は1本の制作費が300万円と少なかったため債務超過に苦しむようになり、(『ウルトラマンA』などは1本500万円)半年間の放送で26話で終了となります。
しかし、権利をめぐるゴタゴタが起きたのは放送終了から数年後でした。まず東洋側が「制作費を払ったのはこちらだ」などと主張して、ひろみプロにあったマスターフィルムを持って行ってしまいます。ひろみプロは、「権利は両社にあり、そんな契約はしていない」と抗議したようですが、フィルムは東洋エージェンシーが保管することになりました。
ただ、ひろみプロはもちろん、キャラのデザイナーなど、『サンダーマスク』の制作に携わった関連会社はたくさんあるので権利関係はかなり細かく複雑だったようです。しかし昭和から平成初期あたりまではこういった権利関係の処理はいい加減だったケースも多く、あまり深く捉えず番組は再放送されていました。
ところが、平成中期くらいに衛星放送、ケーブルテレビなど放映チャンネルが増加すると、サンダーマスクの再放送はピタリとなくなります。