手塚治虫の名作『ブッダ』に登場する名言 「いじめ・差別・死」…現代にも通じる真理?
『火の鳥』や『ブラックジャック』など、数多くの名作がある手塚治虫作品のなかでも、特に「生きることの意味」や「死との向き合い方」が色濃く描かれたのが『ブッダ』です。悟りを開くためにあらゆる苦行や苦悩に立ち向かう主人公・シッダルタ(ブッダ)の名言をご紹介します。
「疫病」は身分を区別しない
『火の鳥』や『ブラックジャック』など、手塚治虫作品には人の生と死を描く名作が数多く残されています。そのなかでも特に「生きることの意味」や「死との向き合い方」が色濃く描かれたのが『ブッダ』です。シャカ族の王子として生まれたシッダルタが、世のなかの苦しむ人びとを救う道……悟りを開くためにあらゆる苦行や苦悩に立ち向かい、ブッダ(目覚めた人)となって生きる姿が描かれています。
今回は、同作に登場するシッダルタ(ブッダ)の名言をご紹介します。そこには、いじめ、差別、死との向き合い方など、現代にも通じる部分が多くありました。
●「世界が滅びるかどうか気にしているうちに僕は死んでしまう」
これは若き日のシッダルタが、悟りを開くための修行の旅に出ようとしていたときに言ったセリフです。「なぜ、わざわざ王族の身分を捨ててまで世界を救いたいと思うのか?」と聞かれたシッダルタはこう答えました。
「バラモン(司祭)もクシャトリア(王族・貴族)もバイシャ(市民)もスードラ(奴隷)もみんないずれは死ぬ!」「疫病はバラモンとスードラと身分を区別するだろうか?」「世界が滅びるかどうか気にしているうちにぼくは死んでしまう だからこそ生きているうちに……やりとげなくてはならないんだ」と。
身分に関係なく死は平等にやって来る。限りある時間を何かを心配することに使うのではなく、少しでも自分の使命を全うするために使いたいという強い決意が込められたセリフでした。
●「ひとりを生きながらえさせるのはとうとい百万人になる」
これは、アヒンサーという何百人も人殺しをしてきた盗賊の男が最期を迎える前にブッダが掛けた言葉です。洞窟の穴に落ちてしまい、その中で窒息しそうになるアヒンサー。死を前にした彼はブッダに「おれァ死ぬのか? 死ぬって苦しいのか?」と救いの言葉を求めます。
するとブッダは「お前はいままでに何百人も殺したという だが一度ぐらいなさけをかけてやったことはないか?」と聞きます。「一人だけ赤ん坊を見逃したことがある」と答えるアヒンサー。
それに対しブッダは「それだけでお前は大きな善をほどこしたのだ なぜならその子は無事に育ち子孫を増やすことができるだろう」「百人殺すのはよくない だがな ひとりを生きながらえさせるのはとうとい百万人になるからな……」
アヒンサーの行いはもちろん許されることではありませんが、ブッダの言葉でアヒンサーは死ぬ間際に改心をするのでした。