【シャーマンキング30周年への情熱(54)】TVアニメにスマホゲーム、幅広い展開に原作者の思いも…
2021年4月からTVアニメ『シャーマンキング』の放送に沿って作品のエピソードや設定、世界観などを掘り下げてきました。今年最後の連載記事では、アニメ化にあたって原作者の武井宏之先生が出した数少ない希望や、アプリゲームのキャラデザに込めた想いなどについて紹介します。
TVアニメの脚本に武井先生が出した「数少ない要望」
TVアニメが放送中の『シャーマンキング』について掘り下げる連載も、2021年最後の記事となりました。今回は、「蔵出し」的な情報とともに今年1年の総括をしてみたいと思います。
4月のTVアニメ放映開始から8か月、物語も中盤を超えましたが、筆者なりにここまでアニメを掘り下げてきて、難しいテーマを分かりやすく伝える構成だと感じています。記事を書くにあたり、筆者は収録台本と原作を常に参照しつつまとめています。それらを比較してみると、基本的には原作に忠実ながらも情報の取捨選択が巧妙だとわかります。
一例を挙げると……最近「ゴーレム編」が終わりましたが、同エピソードは「やったらやり返される」の解決がテーマです。そして「その覚悟があるならやって良い」という言い方をしてはいますが、作品全体として「憎しみの連鎖は断ち切らなければいけない」ということがあるので、複合して解釈すれば「やり返されてもいいだけの強い覚悟があるのなら、やらないという英断もできるでしょ?」という話になると思えるわけですね。
実際にチョコラブは最初のうち「やったらやり返されたので、さらにやり返す」という気持ちでいましたが、最後は全てを受け入れています。特に、「笑いの風で吹き飛ばす」という言葉が実によくハマっていると思います。
ただこれが原作では、チョコラブのコミューン巡りに見られるように、さまざまなキャラの経験や想いが密に描かれることで、内容が一時的に本筋から離れてしまい、その間に読者がテーマを忘れてしまうという問題が起きていたような気がします。あった方がもちろん良いのですが、全体を理解するための壁になっていた可能性は否めません。そこを上手くまとめていたアニメは、とてもわかりやすいものになっていたと感じるのです。
実際に、武井宏之先生は「ゴーレム編」の情報を大胆に整理することを望んでいました。週刊連載時、やや冗長に描いてしまったので上手くまとめて欲しい……それが先生からの数少ない明確な希望だったのです。それだけでなく、スピンオフ作品の提供に意欲的なのも、自分ひとりで描いていると本筋から離れたときに主題の描写が止まってしまうという考えからでした。主題の裏で起きていることを同時並行で描写できたらその問題は解決します。
そういったことを知る身としては、また毎回物語を掘り下げて考察する立場としては、アニメ脚本は実によくできていると感じるのでした。